最新記事

金融

ドイツ、銀行救済めぐりイタリアへの強硬姿勢が仇に

2016年10月3日(月)10時14分

 9月30日、イタリアに対し、経営難の銀行救済をめぐり公的支援をしないよう手厳しい注文を付けていたドイツ。しかしドイツ銀行の経営不安が表面化したことで、しっぺ返しをくらいかねない状況となっている。フランクフルトのドイツ銀本店で2015年6月撮影(2016年 ロイター/Ralph Orlowski/File Photo)

[フランクフルト 30日 ロイター] - イタリアに対し、経営難の銀行救済をめぐり公的支援をしないよう手厳しい注文を付けていたドイツ。しかしドイツ銀行の経営不安が表面化したことで、しっぺ返しをくらいかねない状況となっている。

ここ数カ月、イタリアの銀行の不良債権が話題となっていたが、現在は一転、ドイツ銀の問題が市場の関心事だ。イタリアのレンツィ首相は国営テレビ局RAIで「欧州連合(EU)は銀行の問題解決に全力を尽くすべきだと常に主張してきた。現在の注目の的はドイツ銀行だ」と語った。

国際通貨基金(IMF)も、ドイツ銀の問題は、他の大手行と比較しても潜在的なリスクは大きいと指摘している。

ドイツ、イタリアの両国政府は、イタリア大手行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)の救済費用をめぐって対立してきた。イタリアは同行への機関投資家や、預金代わりに同行の債券を購入した小口投資家を保護したい意向だったが、ドイツはこうした投資家にも費用を負担させるよう要求していた。

<独の態度軟化も>

ドイツ経済はイタリアよりもはるかに強いが、ドイツ銀の規模の大きさは、イタリアの銀行よりも深刻な問題を引き起こしている。2017年に総選挙を控えるドイツの政界も、有権者に不人気なドイツ銀への公的支援には反対している。

英シンクタンク、欧州改革センターのサイモン・ティルフォード氏は「ドイツは、イタリアに対してかたくなな態度を取り続けてきた。今回の事態で、ドイツは態度を軟化させるのではないか」との期待感を示した。

一方、欧州債務危機を通じて他国に注文をつける立場にあったドイツが変わるのは難しいとの指摘もある。欧州議会のドイツ出身議員、スフェン・ギーゴルト氏は「ドイツ銀行は悩みの種だ」と認める一方、ドイツが態度を変えることはないだろうと話す。「ドイツ人の傲慢(ごうまん)さは、もっと根深いところにある」という。



ロイター


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ、米との資源協定「24時間以内」に署名の

ビジネス

米雇用コスト、第1四半期は前期比0.9%上昇 予想

ビジネス

米国株式市場・寄り付き=ダウ600ドル超安、米経済

ビジネス

トランプ氏、米経済縮小と関税の関連を否定 「我慢強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・ロマエとは「別の役割」が...専門家が驚きの発見
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 7
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中