最新記事

人道問題

コンゴ「武器としての性暴力」と闘う医師に学ぶこと

2016年10月2日(日)20時14分
米川正子(立教大学特任准教授)、華井和代 (東京大学公共政策大学院)

 第二に、ムクウェゲ氏の活動を通して、紛争長期化の要因である紛争鉱物問題を取り上げ、性暴力とグローバル経済との関係性に関する認識を広めたいと思ったからである。性暴力と紛争をテーマとする映画は過去に数本上映されたものの、性暴力と紛争鉱物の関係性を取り上げ、かつムクウェゲ氏の活動を描いたドキュメンタリー映画は本作品が初めてである。そのため、性暴力と紛争鉱物の問題に関する認知度が高くない日本において、本映画を上映する意義は十分にあると判断した。

 第三に、「途上国」の人々が「無力」だから、「有能」な「先進国」が助けないといけないという一般的な先入観を排除したかったことである。当然ながら、ガバナンスが弱い国や紛争国にも、ムクウェゲ氏のような優秀で正義感がある方は大勢いる。我々にできることは必ずしも資金援助や技術提供だけではなく、性暴力のような人権侵害に対して声をあげたり真実を追求することも、人助けになる。

 映画上映の運営のために、専門家や学生と任意団体「コンゴの性暴力と紛争を考える会」を立ち上げ、さまざまな団体に助成金を申請したり、広報などの協力をお願いした。またコンゴの紛争と資源の結びつき、国際社会の対応、人権問題と市民社会のアドボカシーなどについての勉強を重ねてきた。

 日本初公開となった2016年6月の立教大学での上映会においては、参加者から、「性暴力と紛争資源の複雑な関係性を初めて知った」「ルワンダ・ジェノサイドは知っていたが、その後のコンゴ戦争は知らなかった」「ムクウェゲ氏の偉大さと女性の強さが印象的」「戦後70年が経った現在も、紛争下の性暴力について考えなくては」という感想が寄せられた。

デニ・ムクウェゲ医師来日講演会
「コンゴ東部における性暴力と紛争」
第1部:10月3日14:00~16:00 (笹川平和財団国際会議場)
第2部:10月4日 9:40~12:10(東京大学本郷キャンパス 伊藤国際謝恩ホール)

【『女を修理する男』上映会】
2016年
10月24日:静岡県立大学 http://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/event/e20161024/index.html
11月上旬:岡山大学
11月17日:上智大学
11月25日:長崎大学
11月30日:神戸市立外国語大学
12月10日:宇都宮大学
12月14日:早稲田大学
日程不明:同志社大学、弘前大学

2017年
1月28日:東京(アムネスティー映画祭)http://www.amnesty.or.jp/aff/
1月29日:名古屋(AMA AFRICA と愛知県青年海外協力隊を支援する会)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ中銀、バーツ高抑制へ金取引に上限設定 3月から

ワールド

独財務相、主要6カ国先行の「二段階EU」推進へ 停

ビジネス

焦点:市場によぎった休減債リスク、「日米連携」奏功

ワールド

インドネシア25年成長率、目標の5.2%達成か=財
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    「恐ろしい...」キリバスの孤島で「体が制御不能」に…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    生活保護と医療保険、外国人「乱用」の真実
  • 10
    「発生確率100%のパンデミック」専門家が「がん」を…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 8
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 9
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中