EU離脱でイギリスの銀行の影響力凋落、政府も耳貸さず
10月24日、英国の金融界はここ数十年、その規模ゆえに政府から優遇されてきた。しかし国民がEU離脱を選択して以来、政治家に耳を貸してもらえないという新たな現実に直面している。ロンドンの金融街で2010年10月撮影(2016年 ロイター/Luke Macgregor)
英国の金融界はここ数十年、その規模ゆえに政府から優遇されてきた。しかし国民が欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を選択して以来、政治家に耳を貸してもらえないという新たな現実に直面している。
6月の国民投票後に誕生したメイ政権は産業の復活と「国民全員のためになる経済」の構築を約束し、金融街シティを不安にさせた。
金融業界は、政府が欧州単一市場へのアクセスを失う「ハードブレグジット」を選べば悪影響が及ぶと訴えている。しかしロイターが取材したシティの大手金融機関幹部らの多くによると、政府は主張に懐疑的で、「英国はEUを離脱してもやっていける」という国民投票のメッセージを無視していると非難されることもあるという。
英銀行協会(BBA)のロナルド・ケント氏は「1940年代に逆戻りしたようだ。国民は英国を倒そうとしているのだから、そこら中に第5列がいるようなものだ」と嘆く。第5列とは、外の敵を助けて密かに国家に反逆する一味のことだ。
BBAのアンソニー・ブラウン会長は23日、国際的大手行が国外移転を計画しているとし、国民と政府の議論が「われわれを間違った方向に連れて行こうとしている」と述べた。
英国民投票で離脱派が勝利した背景には、移民の流入抑制を求める声と並び、銀行を含むロンドンのエリート層に対する反発があったとされる。
ハモンド財務相と財務省幹部らは金融業界は重要だと言い続けているが、裏では金融業界を特別扱いするわけにはいかないと打ち明ける。
政府のEU離脱交渉に通じる関係筋は「交渉で金融業界、いや、いかなる業界であれ優先するのは問題外だ。フェアではない」と言う。
180度の転換
業界が離脱の影響を大げさに言い立てているのではないか、との見方も政権幹部の中にはある。
カービー金融サービス担当相は先週議会で、1国の免許があればEU全域で金融サービスを提供できる権利、いわゆる「パスポート」の中には「不要で使われていないものもある」と指摘した。