北朝鮮対応に悩む中国、「影響力は過大評価」の声も
いら立ちと合意
オバマ米大統領をはじめ世界各国の指導者が中国東部・杭州で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議に集結している最中に、北朝鮮が中距離弾道ミサイル3発の発射実験を行っている。ある国連上級外交官によると、この実験後に召集された安保理会合で、中国は北朝鮮への不満をあらわにしたという。
制裁についての見方は分かれているものの、「議論全体のトーンはまとまっていて、2つの陣営が互いに議論を闘わせているような感じではなかった」と、この外交官は語った。
米国は中国に対し、北朝鮮に核開発をやめるよう自国の影響力を行使し、制裁の「抜け穴」を封じるよう求めている。これまでの制裁はほとんど効果がなかった。
中国社会科学院の研究員、Shen Wenhui氏は中国国営メディア「環球時報」に対し、壊滅的打撃を与えるような制裁は北朝鮮に「人道的危機」をもたらすと指摘。「北朝鮮への制裁において、国際社会は最大限可能な限り、一般市民に及ぶ影響を減らさなければならない」と、同氏は記している。
また中国当局者は、北朝鮮に対する中国の影響力を西側が過大評価していると言う。
「北朝鮮に核兵器を放棄するよう求めても失敗するだろうし、韓国にTHAADを拒否するよう求めても失敗すると思う」と、上海にある復旦大学で軍縮・地域安全保障プログラムのディレクターを務める沈丁立教授は語る。
同教授は北朝鮮が中国にとって有益だとし、「米国に対抗するうえで、中国は北朝鮮を必要としている」と指摘する。
一方、韓国では、北朝鮮に制裁を加えるのに中国はこれ以上何もしないだろうとの見方が一部で広がっている。
「北朝鮮が耐えられないような制裁は、中国によって阻止されるだろう。北朝鮮からそうするよう頼まれなくてもだ」
こう語るのは、かつて6カ国協議で韓国の首席代表を務めた千英宇・元大統領府外交安保首席秘書官だ。「故に北朝鮮はその陰に隠れ、核プログラムを気楽に推進しているのだ」
(Benjamin Kang Lim記者、Michelle Nichols記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)