最新記事

中国

G20、日中関係は?――日露首脳会談で日本に有利?

2016年9月5日(月)06時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

G20の影響力を世界に示したい習近平 Nicolas Asfonri-REUTERS

 杭州で開催されているG20二日目の5日夕方に日中首脳会談が行われる。日露会談を直前の2日に行ったことが日本に有利に働きそうだ。CCTVは珍しく安倍首相の杭州到着を大きく扱った。米中会談とともに日中関係を見てみよう。

日露首脳会談が中国に与えた影響

 安倍首相は9月2日、ロシアのウラジオストクでプーチン大統領と首脳会談を行った。ウクライナ問題などを通して米露の関係が好ましくない中、日露首脳会談を、このタイミングで断行した安倍首相の決意は高く評価していい。

 というのも、日米に対抗する中国は、米露関係が良くないことと、ウクライナ問題によりG8からロシアを外し、先進7か国のG7だけで動こうとする日米が不快でならなかった。

 G7などという、すでに実効性のないサミットより、中国が主宰するG20の方が、どれだけ世界に影響を与えうるかを見せようと、抵抗を示してきた。

 だから、習近平政権はロシアとの緊密さを強調して、アメリカを牽制し、日本を抑え込もうと試みていたのである。

 だというのに、その日本が、なんとプーチン大統領と「ウラジーミル」「しんぞう」などと呼び合って会談しているではないか。プーチンは、嬉しさを表に出さないように自制しているが、しかし、どこから見ても、やはり「嬉しそう」だ。自分以外の首脳に、この表情を見せるのはやめてほしいと、習近平国家主席は内心思っているにちがいない。

 中国の報道では、盛んにプーチン大統領が安倍首相に「1928年(昭和3年)に昭和天皇の即位の礼で用いられた名刀」を贈ったということばかり大きく扱っている。この刀は、終戦後、アメリカやオランダに流出したものを、その後ロシアが入手したのだという。

 安倍首相に同行した世耕弘成・ロシア経済分野協力担当大臣が「首相がこの刀を職場で使わないようにしてほしい」と言ったことなどを書き立て、暗に「軍国主義国家・日本」を示唆するようなニュアンスがにじみでている。

 しかし、どんなに抵抗してみたところで、安倍首相がプーチン大統領と親密にしていることを否定はできない。ウラジオストクにおける日ロ首脳会談を定例化していくようだし、またプーチン大統領が今年12月に安倍首相の故郷である山口を訪れ、日露首脳会談を行うことも約束したのを知ってしまった。

 さて、こうなると、日本を「のけ者にする」という戦略を立てることはできにくくなる。

 その中国の「困惑」がにじみ出ていたのが、安倍首長の杭州到着の場面である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、欧州PMIでユーロ一

ワールド

アングル:米政権の長射程兵器攻撃容認、背景に北朝鮮

ワールド

11月インドPMI、サービスが3カ月ぶり高水準 コ

ビジネス

S&P、アダニ・グループ3社の見通し引き下げ 米で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中