最新記事

ブラジル

リオ五輪閉幕、ブラジルを待ち構える厳しい現実

2016年8月24日(水)18時06分

8月22日、リオデジャネイロ五輪が幕を閉じるとともに、ブラジル国民に厳しい現実が舞い戻ってきた。写真はリオデジャネイロのオリンピック公園前で昼食をとる作業員たち。22日撮影(2016年 ロイター/Bruno Kelly)

 リオデジャネイロ五輪が幕を閉じるとともに、ブラジル国民に厳しい現実が舞い戻ってきた。ルセフ大統領の弾劾裁判から深刻な景気後退に至るまで、問題は山積している。

 ブラジル国民にとって、五輪は地平線の彼方に輝く一筋の光明だった。

 「われわれが直面する厳しい現実を覆い隠してくれるものは、もう何も残っていない。最近まで多くの人々が抱いていた壮大な思いが支えを失った」と語るのは、哲学者で作家のロベルト・ロマーノ氏だ。

 ブラジルが主催した2014年のサッカーワールドカップと今年の五輪は、同国が国際舞台に立つ好機となるはずだった。

 ところが、まるで大会を合図にしたようにブラジル経済と左派政権はほころびを露呈している。五輪自体は、数々の不備はありつつも試合や警備は円滑に進み、概ね期待通りの成果を収めた。

さあ、どうしよう

 五輪が終わった今、ブラジル国民は「さあ、どうしよう」と自問している。

 フィットネスのインストラクター、フラビオ・マトスさん(37)は「オリンピックは楽しかったけど、余興だ。これからは本当に解決すべき問題が待ち受けている」と話す。

 第一に、議会上院では今週、ルセフ大統領の弾劾裁判が始まる。ルセフ氏はかつてルラ前大統領と並び、経済を好況に導いた功績で労働階級の支持を得ていたが、今では汚職事件の捜査を妨害しようとした疑いで2人そろって捜査を受けている。

 世界金融危機にあえぐ先進国から羨望の眼差しを浴びていたブラジル経済は、今や大恐慌以来で最悪の景気後退に苦しんでいる。一部の経済指標からは、弱々しいながらも回復の始まりがうかがえるが、11%を超えた失業率など、他の指標は相変わらず厳しい現実を伝えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中