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南極氷河を堰き止めている棚氷が崩壊の危機
Pauline Askin-REUTERS
<陸上から洋上に張り出した南極で4番目に大きい棚氷に亀裂が広がっている。もし崩落し、背後に堰きとめられていた氷河が流れ出せば海面上昇を招くことが懸念される>
今年は南極にとって受難の年だ。
5月に発行された科学誌ネイチャーには、東南極で最も急速に溶解が進むトッテン氷河が「根底から不安定化している」と警告する論文が掲載された。続く6月、米海洋大気局(NOCC)は南極で観測した二酸化炭素(CO2)濃度が400万年ぶりに400PPMを超え、危険ラインを超えたと発表した。
そして今、南極海で4番目に大きい棚氷(陸上から洋上に張り出した氷)「ラーセンC」について、科学者たちが新たに憂慮すべき兆候を見つけた。イギリスの南極調査チーム「プロジェクトMIDAS」によると、ラーセンC棚氷の表面に巨大な裂け目が生じ、急速に広がっているという。
2011~15年の間に全長約30キロに広がったラーセンC棚氷の亀裂は、前回観測した16年3月からわずか5カ月間で22キロ伸長した。隣りのラーセンA棚氷とラーセンB棚氷は、それぞれ1995年と2002年に崩壊した。
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報告書を発表したMIDASは、警鐘を鳴らす声明を発表した。「このまま亀裂が拡大し続ければ、最終的には巨大な棚氷が、分離して一気に崩壊する。そうなればラーセンC棚氷の9~11%が消滅し、氷河をせき止めている氷崖が崩壊する最悪の危機に陥る。コンピューターのモデル解析によると、残存した棚氷も不安定になり、ラーセンCは崩壊したラーセンBの二の舞になる可能性が高い」
地震と同じで予測不可能
MIDASの氷河学者であるマーティン・オリアリーによると、もし今回の予測が現実になれば、アメリカのデラウェア州の面積に相当する巨大な氷の塊が海中に沈むことになるという。
「亀裂が拡大するメカニズムにはまだ謎が多く、棚氷がいつ崩壊するかを予測するのは難しい。地震の予測と同じだ。明日起きるかもしれないし、数年後かもしれない」
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棚氷の大部分はすでに洋上に浮かんでいるため、崩壊しても海水面の上昇にそれほど影響を及ぼすことはない。だが棚氷が消滅すれば、背後にせき止められていた氷河が海に流出するスピードが速まり、もともと上流や陸上にあった氷までもが海に流れ込むことになる。その結果、世界の海水面の上昇に深刻な影響を与えると懸念されている。
(International Business Times)