イギリス銀行業界は高リスク融資拡大競争へ突入、財務懸念が浮上
8月16日、英国の銀行業界では、よりリスクの高い分野で新規融資拡大に向けた競争が激しさを増している。写真はイングランド銀行の正面ホール床にある英ポンドを表すモザイク。ロンドンで2008年3月撮影(2016年 ロイター/Luke Macgregor)
英国の銀行業界では、よりリスクの高い分野で新規融資拡大に向けた競争が激しさを増している。国民投票における欧州連合(EU)離脱派勝利で景気後退の恐れ強まったことを受け、借り入れをためらうようになった顧客を取り込む必要がある上に、超低金利下で収益を確保しなければならないからだ。
HSBCやロイズ・バンキング・グループ、バークレイズ、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)といった大手だけでなく、より規模の小さい銀行も新規融資のキャンペーンを積極的に推進している。
銀行が打ち出したのは、クレジットカードなどの無担保融資や新興企業向け融資を強化する方針。伝統的な収益源となっていた商業融資や住宅ローンは国民投票前から需要が落ち込んでいたためだ。
ただ、経済の先行き不透明感が広がる中でこうした高リスク融資に一斉に乗り出していることで、一部の銀行の長期的な財務基盤が危うくなるのではないかと警鐘が鳴らされている。
ペンバートン・キャピタル・アドバイザーズのマネジングパートナー、サイモン・ドレーク・ブロックマン氏は「この手の戦略はしばしば高い代償がつくことが証明されている。なぜなら景気後退のショックに見舞われれば、これらの多くの融資は焦げ付くからだ」と指摘した。
英消費者の債務は既に相当膨らんでおり、業界データによるとクレジットカード融資残高は昨年末時点で630億ポンドと2014年末の610億ポンドから増加。今年7月には英金融行動監視機構(FCA)が、クレジットカード借り入れについてその規模と性質などについて懸念を示した。
それでも銀行は、増益を望む株主と景気回復を目指す政府の双方から融資拡大を迫られている。
こうした中で中小企業向け融資促進策として例えばHSBCはウェブサイトで、従来年7.9%としていた手数料を除く適用金利を最低年5.9%に設定した。