【経済政策】労働者の本当の味方はクリントンかトランプか
Chris Keane- REUTERS
<先週は、トランプとクリントンの経済対決が行なわれた。かつて米工業の中心地だったラストベルトで、それぞれの経済政策を発表したのだ。勝敗の決め手は「どちらが本当に労働者の味方か?」の一点。クリントンは、トランプを正義の味方と信じてしまった労働者の目を覚まさせようと必死だ> (写真は、ミシガン州デトロイト郊外の工場で支持者と握手するクリントン)
労働者階級の真の擁護者は誰か?──先週、ミシガン州のラストベルト(衰退した工業地帯)でそれぞれの経済政策を発表した民主党のヒラリー・クリントン前国務長官と共和党の富豪ドナルド・トランプの勝敗の決め手はこの一点に絞られる。とくにクリントンの課題は、予備選を通じてトランプが巧みに作り上げた「クリントン=特権階級」のイメージを打ち破ることだ。
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トランプが提案する経済政策こそ、トランプのような不動産王とその同類たちの懐を肥やすたものだと、クリントンは訴えた。数百万人の労働者が、不公正な貿易協定を破棄し自身のビジネスノウハウで中西部に雇用を取り戻すというトランプの支持に回った。だが彼の経済政策の恩恵を受けるのは労働者ではない、とクリントンは言う。「世間にはなぜか、トランプは本当に中間層の味方で、金持ちや権力者にこれまでのツケを払わせてくれるという神話がある。信じてはいけない」
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それからクリントンは、数日前にトランプが発表した経済政策を1つ1つ解剖し、いかにそれが金持ち優先で、中間層や貧困層を無視しているかを説明した。
金持ちはさらに金持ちに
「トランプは新しい税の抜け穴を提案した」と、クリントンは皮肉った。法人所得税に15%の上限を設けるという提案のことだ。実施されれば、「トランプが負担する税率は数百万人の中流世帯より低くなる」。545万ドルを超える遺産にかかる相続税を廃止するという別の提案も、「99.8%」のアメリカ人には何の恩恵もない。
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自らを政策本位の実務家として演出したいクリントンは、トランプが描くて暗くて悲観的な雇用と生産の将来像は現実を反映していないと言う。民主党と共に、やればできるポジティブさを強調する。もちろんやり過ぎれば、賃金が停滞して苦しむ中間層の現実から浮いてしまう。クリントンはその綱渡りをやってのけようとしている。新しい産業を立ち上げるのが速いアメリカの潜在力と技術革新力、教育などをテコにして一気に競争に勝つ。その過程で、あまりに大きくなり過ぎた所得格差を是正する。