最新記事

イギリス

イギリスの学校で人種差別の「いじめ」が増加

2016年8月9日(火)18時00分
エリザベス・バールマン

Lin Taylor-REUTERS

<イギリスの学校で、人種差別的な言動が理由で停学や退学処分になる件数が、過去6年間で2割も増加していることがわかった。政府は人種間の緊張が高まる地域の実態も考慮して、フリースクールの申請基準を拡大している>

 イギリス教育省の統計を分析したところ、人種差別的な言動が理由で、学校から停学や退学の処分を受けた生徒の数が、2009年から15年までの6年間に20%増加していたことがわかった。

 今週、統計の分析結果を発表した民間の慈善団体「ニュー・スクールズ・ネットワーク」によると、現状では毎日20人近くの生徒が、同級生に対する人種差別的な言動を理由に、学校から停学や退学処分を受けているという。

 15年8月までの一年間に、人種差別的な言動による処分はイギリス全体で4,000件起きていた。件数が最も多かったのは、中部ウェスト・ミッドランズ州や沿岸地方の町など経済的に困窮している家庭が多い地域だった。

 しかしロンドン周辺では、意外な結果が出た。

【参考記事】不安なイギリスを導く似て非なる女性リーダー

「発生件数はロンドン郊外の地域の方が多く、人種的にははるかに多様性が高い中心部の地域では少なかった」と、慈善団体の広報担当者は話している。「イギリス全体で最も問題なのは、ウェスト・ミッドランズ州と北西部のマンチェスター都市圏の2カ所だ」

 学校での人種差別的な言動とは、ののしったり、嫌がらせをしたり、攻撃的な落書きのような実際の行動に加えて、言葉でからかったりすることも含まれている。

「人種差別的な言動や出来事を報告・記録するのは、生徒に『レイシスト(人種差別主義者)』のレッテルを貼るためではないし、停学や退学などの処分をするためでもない」と、別の慈善団体「人種差別にレッドカード」の広報担当者は話している。「こうした事例報告は、学校が生徒たちに人種差別的な言動をさせない教育をするうえで役立つものだ。人種差別は、いじめられる側だけでなくいじめる側も傷つけることになる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

モルガンSが北海ブレント価格予想引き上げ、OPEC

ビジネス

スターバックス、中国事業経営権を博裕資本に売却へ 

ワールド

ペルー、メキシコとの国交断絶表明 元首相の亡命手続

ワールド

中国、日本など45カ国のビザ免除措置を来年末まで延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中