最新記事

オリンピック

五輪開催コストは当初予算の「5割増し」が平均額

2016年8月8日(月)15時20分
リディア・トムキウ

Pawel Kopczynski-REUTERS

<リオ五輪の開催費用は、結局当初予算より約50%増えることになりそう。実は60年以降に開催されたオリンピックで、開催費用が予算内に収まったケースは一つもない>

 オリンピック開催は歴史的な大事業。多くの関連施設を整備する膨大な予算を伴う。当初予算を超過してしまうケースがほとんどだ。先週リオデジャネイロで開幕した今回のオリンピックも例外ではない。しかもブラジルの80年ぶりの景気低迷と重なってしまった。

 先月発表された英オクスフォード大学サイードビジネススクールの研究報告書によると、リオ五輪の競技開催関連の費用は最終的に46億ドルになりそうで、これは当初予算を51%超過することになる。すべての関連事業を合計した全体のコストは、120億ドルになると推計され、そのうち4分の1は地元リオデジャネイロ州の負担だ。

【参考記事】リオ五輪で世界が注目するアスリートBEST10

 開催費用を押し上げているのは、地下鉄の建設費や、競技会場への臨時の電力供給、臨時の座席の設置などにかかる費用。ビジネス情報企業のIHSマークイットは、開催費用の70%が民間セクターから支出されていると算出している。またロイターの報道によると、地元の組織委員会は1億2100万ドル~1億5100万ドルの赤字を抱えている。

 直近で開催された夏季、冬季のオリンピックは、いずれも過去最高の開催費用がかかった。ロンドン五輪の最終的な開催費用は150億ドルで、ソチ五輪は219億ドル。前出のオクスフォード大学の研究報告書によると、1960年以降に開催されたオリンピックで、開催費用が予算内に収まった例は一つもない。

「オリンピックでは、世界のどんな大規模プロジェクトと比較しても多い、実質56%の予算超過が発生している」と、報告書は述べている。「オリンピック開催を決めた都市や国は、既存の世界の大規模プロジェクトの中でも、最も費用が掛かり、最も財政的に危険なプロジェクトに着手することになる。多くの都市や国が、結果として財政危機に陥っている」

 2009年にブラジルで南米大陸初のオリンピック開催が決まった時、ブラジル経済は資源価格の高騰などから絶頂期にあった。しかしオリンピック開催を迎えた今、ブラジルはここ80年で最悪の景気低迷の真っ只中にある。

【参考記事】暗雲漂うリオ五輪を襲った7つの嫌なニュース

 リオへの道のりは苦難の連続だった。関連インフラの整備事業は遅々として進まず、選手村の宿泊施設はトラブル続き、さらに感染が拡大した「ジカ熱」への懸念もあった。6月には、莫大な負債を抱えたリオデジャネイロ州が、財政危機による「非常事態」を宣言し、政府に対して緊急の財政支援を求めた。

 先月実施された世論調査では、ブラジル国民の63%が、オリンピック開催は「ブラジルにとって良い影響よりも悪い影響の方が大きい」と回答していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

韓国資本市場、12月は外国人売り越しが20年以来高

ビジネス

ユーロ圏の家計、消費拡大の可能性=レーンECB専務

ワールド

米加州、商用トラックの排ガス規制巡る申請取り下げ 

ワールド

韓国大統領を拘束、現職で初 尹氏「流血避けるため出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン」がSNSで大反響...ヘンリー王子の「大惨敗ぶり」が際立つ結果に
  • 4
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 5
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 6
    日鉄はUSスチール買収禁止に対して正々堂々、訴訟で…
  • 7
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 8
    ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローン…
  • 9
    トランスジェンダーを抹消か...トランプ政権、気候変…
  • 10
    LA史上最悪の山火事が招いた、ハリウッド映画のよう…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 6
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 7
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 8
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 9
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中