カルパースのCSR投資はリターンを犠牲にした無責任投資
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<アメリカ最大の年金基金カルパースの過去1年の運用成績が0.6%にとどまった。同基金の20年間の年平均運用利回りは7.8%だ。敗因の1つは、企業の社会的責任、即ちCSRに配慮した投資という考え方が間違っていたからではないのか>
アメリカ最大の公的年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は、今年6月末までの年間の運用成績が2009年以来、最低となったと発表した。同基金はこれまで「社会的責任(CSR)投資を行う」という運用方針だったが、カリフォルニア州に住む納税者のためにも、本当にこれでいいのかどうかを見直す時期だ。
2016年6月30日までの1年間のカルパースの運用成績は0.6%。過去20年間のカルパースの年平均運用利回り7.8%を大きく下回っただけでなく、昨年度の目標だった2.5%にも届かなかった。敗因の1つは、CSR投資に力を入れ過ぎたことではないかと思われる。
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カリフォルニア州の年金は確定給付型なので、約束した年金を支払うためには、インフレ率を上回るスピードで運用資産を成長させる必要がある。それができなければ、カリフォルニアの納税者は多額の積立債務を抱えることになる。
カルパースは2014年に、サステナブル(持続可能な)投資に関するレポートを発表し、「環境・社会・ガバナンス(ESG)」に配慮した企業を重点的に選んで投資していると述べた。目先の利益だけを追求する企業より、社会や環境にも配慮する企業のほうが長期的にはより高い成長を遂げることができる、という投資哲学が背景にある。儲かっている企業でも、社会や環境に有害だと判断すれば投資しない。
米労働省のお墨付き
筆者の同僚スティーブン・マランガは、カルパースがCSR投資を始めたことで、カリフォルニアの納税者は多大な犠牲を強いられていると書いた。それだけではない。何十億ドルもの資金を、政界とつながりのある企業に注ぎ込んだのだ。
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カルパースの運用成績が実際に低迷していることで、CSR投資の考え方そのものが賢明なのかどうか疑問視されている。ジョージ・W・ブッシュ政権下の2008年、米労働省は、年金の受託者は「加入者ならびに受益者の利益のみを考えた最善の」運用を行うよう通達した。「受託者責任」と呼ばれるこの考え方は、厳密には州や地方の年金には適用されないが、年金が投資判断を行う際のユニバーサルな指針となったと、ボストン大学法科大学院のデビッド・ウェバー教授はワシントン・ポスト紙で述べている。
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さらに労働省は2015年、新たな関連規則案を発表。年金は、社会的・環境的な基準を念頭に置いて投資先を決めてもよいとした。これにより、州ならびに地方の年金は、CSR投資に力を入れるようになった。カルパースはそれ以前からCSR投資を始めていたが、それに弾みがついた。