最新記事

領土問題

南シナ海の中国「九段線」内の権利認めず、ハーグ常設仲裁裁判所が判断

2016年7月12日(火)23時38分

7月12日、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、中国が南シナ海で主権が及ぶと主張している境界線「九段線」について、同海域内の資源に対する歴史的な権利を主張する法的な根拠はないとの判断を下した。写真は南沙諸島の中国埋立地。米海軍提供。昨年5月撮影(2016年 ロイター)

  オランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、中国が南シナ海で主権が及ぶと主張している境界線「九段線」について、中国には同海域内の資源に対する歴史的な権利を主張する法的な根拠はないとの判断を下した。

 また、中国当局の警戒行動はフィリピン漁船と衝突するリスクを生じさせたほか、人工島などの建設活動によりサンゴ礁に回復不能な損傷を与えたと指摘した。

 これに対し中国外務省は、中国人は同海域で2000年以上も活動してきた歴史があり、排他的経済水域(EEZ)の設定は可能と主張し、仲裁裁判所の判断を受け入れない考えをあらためて示した。

 中国は南沙(スプラトリー)、西沙(パラセル)諸島を含む南シナ海の島々に対する主権を有し、中国の立場は国際法と国際慣行にのっとっていると強調した。

 中国の王毅外相は、今回の動きは始めから終わりまで茶番であり、緊張や対立を深める結果となったとする一方、状況を正しい軌道に乗せる時期が来ており、フィリピンのドゥテルテ新政権は関係改善への対応に誠意がうかがえると述べるなど、融和的な姿勢もにじませた。

 フィリピンのヤサイ外務相は記者会見で「この重要な判断が及ぼすものについて慎重かつ徹底的に精査している」とした上で「関係国・地域に対し自制と誠意を求める。フィリピンは今回の画期的な決定を強く支持する」と述べた。

 日本政府は仲裁判断が最終的なもので、紛争当事国を法的に拘束するとの見方を示した。ベトナムな歓迎する意向を表明する一方、台湾は受け入れないとした。

 ISEASユソフ・イシャク研究所のイアン・ストーリー氏は「南シナ海の管轄権を主張する中国にとって、今回の判断は法律的に大打撃で、中国は今後、間違いなく激しい怒りを表明してくるだろう。南シナ海で一段と積極的な行動をとる可能性もある」と述べた。

[アムステルダム/北京/マニラ 12日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ関税による日本への影響、十分精査し対応=林

ビジネス

アフリカ開発銀、重要鉱物で裏付けの通貨制度案を提示

ワールド

韓国輸出、1月は1年半ぶり大幅減 米関税問題や営業

ビジネス

米SEC、正式調査のハードル上げる 委員会の承認必
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 5
    メーガン妃からキャサリン妃への「同情発言」が話題…
  • 6
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 7
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 8
    トランプ「関税戦争」を受け、大量の「金塊」がロン…
  • 9
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 10
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中