南シナ海めぐる仲裁裁判を控え、中国のプロパガンダ攻勢が過熱
7月3日、南シナ海の領有権をめぐりフィリピンが中国を訴えた国際的な仲裁裁判の判断が迫るなか、日本や米国、東南アジアの当局者が神経を尖らせている一方で、中国高官は「気にしていない」と明言する。写真は中国が埋め立て開発を進める南沙諸島のファイアリー・クロス礁。米海軍が2015年5月撮影(2016年 ロイター/U.S.Navy)
南シナ海の領有権をめぐりフィリピンが中国を訴えた国際的な仲裁裁判の判断が迫るなか、日本や米国、東南アジアの当局者が神経を尖らせている一方で、中国高官は「気にしていない」と明言する。
南シナ海での領有権を主張する中国と、極めて重要な国際貿易ルートでもある同海域における同国の行動に反発したフィリピンの提訴を受け、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は今月12日、裁定を下す。
南シナ海の9割に主権が及ぶと中国は主張しており、フィリピンは国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、異議を申し立てている。
「実際いつ裁定が下されるのか、知らないし、関心もない。どのような裁定が下るにせよ、全面的に間違っていると考えるからだ」。中国の劉暁明駐英大使は、ロンドンでの昼食会でロイターに語った。
「(裁定は)中国や、それらの岩礁や島嶼(とうしょ)についての中国の主権に何らの影響を与えるものではない。それは重大で不当な、悪しき前例となるだろう。この件について法廷で争うつもりはないが、自らの主権のために、もちろん戦うことになる」
仲裁裁判所の裁定を無視しようとする中国政府の方針は、国際法に基づく秩序の拒絶と同時に、米国に対する直接的な挑戦を意味する。米国は、中国が軍事及び民生用目的で同海域の島々と岩礁を開発しており、地域の安定を脅かしていると考えている。
また、それは領有権紛争リスクをさらに高めることになると、弁護士や外交官、安全保障の専門家らは指摘する。
裁定結果が下された後で、米政府がどう対処するかによって、この地域における同国の信頼性が試されると広く受け止められている。米国は第2次大戦以降、自己主張を強める中国に対抗して、この地域において圧倒的な安全保障のプレセンスを維持してきた。