死亡事故のテスラは自動運転車ではなかった
つまり死亡したジョシュア・ブラウンは、もっと注意していなければいけなかった。ブラウンがスピードを出し過ぎていたとか、DVDを見ていたとか、事故当時の状況に関して食い違う報道も出ている。当初の事故報告にはそのような事実は書かれていないが、もしそれが本当だったとしても、テスラがトラックより優先権があった事実は変わらない。
事故の2か月前、デュ―ク大学のロボット工学者ミッシー・カミングスは米議会で、まるで事故を予見するようにこう証言した――「自動車メーカーは、自動運転の安全性が確立されていないのに発売を急いでいる......誰かが死ぬことになる」と。テスラの社名こそ言わなかったが、ドライバーがハンドルから手を離すことを許している自動車メーカーはテスラだけなので、カミングスも念頭に置いていたのだろう。
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テスラの運転支援システムは、前方向を向いた2つのセンサー(ステレオではないカメラとレーダー)に頼っている。テスラのオーナーによる検証でもわかっているが、このシステムだけでは、道路上の障害物への衝突を完全に避けることはできない。一方メルセデス・ベンツとBMWは、ステレオカメラ(接近する障害物を早期に検知できる)と5つのレーダー(広範囲に渡って複数の障害物を検知できる)を搭載している。
つまりハンドルから手を離すことを許しているテスラは、自社の運転支援システムの機能を実際よりも誇張しているとも言える。
それでも事故は減る
死亡事故がニュースになる前日、都市交通局の全米協会が自動運転車に関する勧告を行った。この中では、自動車専用道路以外で「一部が自動運転化された車」の運転を許可しないよう求めている。「こうした車が危険運転を誘発することがわかっている」からだ。勧告はテスラの事故を未然に防げていたかもしれないが、部分的な自動運転化はトータルで見れば安全に寄与する可能性があることは考慮されていない。
事故のニュースから数日後、NHTSAは交通事故の死亡者数が2015年に7.7%増加したと発表した。ここ数年で最大の増加率だ。テスラのイーロン・マスクCEOがやや自己弁護的に指摘したように、部分的な自動運転化は死亡者数を半分にできるかもしれない。完全な自動運転化が実現すれば、そこからさらに半分にできるだろう。今回のテスラの事故によって国や各州の交通規制当局が、現在開発途上にある本当の自動運転車を「色眼鏡」で判断することがあってはならない。
Randal O'Toole is a Cato Institute Senior Fellow working on urban growth, public land, and transportation issues.
This article first appeared in the Cato Institute site.