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金融世界的な国債利回りマイナス化、財政政策へ転換促す
7月6日、英国民投票でEU離脱が決まって以来、主要各国の長期金利が急低下している。これは世界経済に新たな一撃が見舞われたという金融市場からの審判にほかならない。香港の外貨両替所前で昨年8月撮影(2016年 ロイター/Tyrone Siu)
英国民投票で欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が決まって以来、主要各国の長期金利が急低下している。これは世界経済に新たな一撃が見舞われたという金融市場からの審判にほかならない。政策当局は軸足を金融政策から財政政策に移すよう迫られそうだ。
多くの政府が今後数十年分の資金をタダ同然で借りられるようになった。エコノミストは今週、手段を使い果たした中央銀行に頼るのは止め、今こそ財政政策によって投資を活性化させよと声を挙げている。
英国民投票が発した大きなメッセージは、何年間も実質賃金の低迷を経験した国民がついに、ほんの10年前には考えられなかったような現状維持への拒否を突きつけたという事実だ。
世界金融危機後の異例の金融緩和は、急激な痛みを抑えるのには貢献したが、資産ブームをあおって格差をさらに拡大させ、問題を増幅しただけ、との批判もある。
<蒸発する金利>
英国民投票が実施された6月23日以来の国債利回りの低下は、今後10年、20年間の世界経済について警戒信号を発している。
10年物英国債利回りは0.5%ポイント以上低下して0.80%となった。50年債でさえ1.38%だ。
力強い景気回復は見込めなくなり、大半の労働者が退職するころになってもインフレ率は中銀目標に達しないと、債券市場は告げているようだ。
10年物米国債利回りは過去最低の1.38%に下がり、30年物は1950年代以来の最低水準。他の先進国ではマイナスに陥っており、スイス国債は期間50年に至るまですべて、日本は20年程度、ドイツは10年程度まで利回りがマイナスとなった。
JPモルガンの計算によると、世界の国債全体の36%に当たる10兆ドル相当がマイナス圏に沈んだ。社債も1兆ドル近くがマイナス利回りとなっている。
<財政にバトンタッチ>
各国政府は、有権者の反乱を助長する低成長に終止符を打つため、より直接的な財政政策に訴えるべきだろうか。
HSBCによると、今年は既に財政政策の緩和が始まっている。英国民投票前の段階で、今年の世界の政府支出の伸びは2009年以来で最大となる見通しが示されていた。
HSBCのグローバル首席エコノミスト、ジャネット・ヘンリー氏は「今後は多くの国で、財政政策が何らかの形でより大きな役割を果たすようになるだろう」とした上で、「どんな財政刺激策でも良いというわけではない」とくぎを刺す。
ヘンリー氏は、持続的な構造改革につながったり、生産性の向上を通じて民間投資を促すような財政政策でなければ、「債務負担を低下させるのに必要な長期的な名目成長率は達成できない」と説明した。
JPモルガンのエコノミスト、ジャン・ルーイス氏は、経済的にも政治的にも、財政刺激策を実施することの妥当性は明らかになったと指摘する。「金融政策は世界経済を沈没させないという意味で英雄的な仕事をしたが、残された手段は乏しい。財政政策にバトンを移す時だろう」
ルーイス氏は、民間投資の不足や公共インフラの劣化を考えると、財政支出が政府の非効率性をもたらすとか、民間投資を締め出すと懸念するには及ばないと指摘。「財政支出によって物事が回り始め、民間セクターも後に続かざるを得なくなる」と見ている。
(Mike Dolan記者)