銃乱射はテロか憎悪か、思い当たり過ぎるフロリダの闇
Steve Nesius-REUTERS
<史上最悪の銃乱射はテロだったのかヘイトクライムだったのか。襲われたのがゲイが集まるナイトクラブだったことで、アメリカ人は反応に戸惑っている。いったいなぜこんな事件が起こったのか。現地に取材するとヒントがいくつも見えてきた>
昨日未明の銃乱射事件は、アメリカが抱える脅威がテロだけではないことを思い起こさせた。フロリダ州オーランドでゲイが集まるナイトクラブに男が入り込み、50人を撃ち殺した。
保守派の政治家はテロとの戦いを強化すべきだと呼び掛ける。進歩派は銃規制の厳格化を求め、LGBT(性的少数者)コミュニティーは寛容を説く。イスラム教徒は「平和の宗教」であるイスラム教と過激派の思想を区別してくれと懇願する。
いったい事件の本質は何なのか、本当の教訓は何なのか、どうすれば再発を防止できるのか、アメリカ人は皆、答えを探しあぐねている。
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バラク・オバマ大統領は昨日午後に演説し、このアメリカ史上最悪の銃乱射事件を「テロの行為であると同時に憎悪の行為」だとした上でこう言った。「とりわけ、レズビアンやゲイ、バイセクシャルやトランスジェンダーのアメリカ人にとっては大きな悲しみの日になった。犯人は、人々が友人と集い、踊り、歌い、人生を謳歌するナイトクラブを標的にした。しかも攻撃されたのはただのナイトクラブではない。そこは団結と地位向上のための場所、互いに意識を高め合い、語り合い、自らの権利を主張する場だ」
社会を分断する緊張
オマル・マティーン容疑者(29)の動機がゲイに対する憎悪だったのか、テロ組織への忠誠のあかしだったのか、あるいは別の何かなのかはまだ不明だ。だが父親ミル・セディクはNBCニュースに、マティーンは最近、マイアミ市内で男性2人がキスしているのを見て怒っていたと話した。「キスし合い、触り合うのを見て、息子は言った。『あれを見てくれ。俺の子供の前で何てことを』」と、セディクは言う。「それから一緒にトイレに行くと、そこでも男性同士がキスをしていた」
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オレゴン州ポートランド出身のゲイの男性、ジミー・ラドスタは、こんな事件が起こるのは、同性婚は社会を破壊すると喧伝し、トランスジェンダーを捕食者扱いする政治家のせいだと言う。こうもつけ加える。「犯罪者や狂った連中、テロ容疑者にまでやすやすと銃を渡す政治家も悪い。銃犯罪は全員の問題だ」
フロリダ州では同性婚こそ認められているかもしれないが、一方で、雇用主が同性愛者であることを理由に誰かを解雇したり、家主が部屋を貸さなかったりすることもまた合法だ。連邦最高裁が昨年、同性婚を全米で合法化する判断を示して以降も、フロリダ州はまだ何も手を打っていない。