ヒラリーを「歴史的」勝利に導いた叩かれ強さ
Lucas Jackson-REUTERS
<二大政党では初の女性候補となったヒラリー。7日の勝利演説では、本選を意識してトランプに辟易する共和党支持層にラブコールを送った>
6月7日のヒラリー・クリントンの勝利宣言は、アメリカの歴史に残る瞬間だった。
ニュージャージー、サウスダコタ、ニューメキシコ、カリフォルニア各州の予備選で勝利したヒラリーが特別代議員を含むマジックナンバー(過半数)と、特別代議員を含まない過半数のどちらも達成し、民主党の候補指名を確実にした。アメリカで女性が初めて選挙権を得てから95年、二大政党では初めての女性候補が誕生した。
ヒラリーの勝利宣言スピーチも、その点を重視した。「今夜の勝利は、1人のものではありません。この瞬間を可能にするために戦い、犠牲になった何世代にもわたる女性と男性が勝ち取ったものです。」と、1848年にニューヨークで始まった女性人権運動に言及し、歴史的な達成を分かち合った。
しかし、ヒラリーがこの勝利を心から喜べない出来事もいくつかあった。
一つは、予備選前夜のことだ。
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今回の予備選では、サンダース陣営は「選挙が始まる前からヒラリーが有利になるようなシステムだ」と、民主党の既存の政治家が占める特別代議員のシステムを強く批判してきた。
ゆえにヒラリー陣営は、特別代議員を含めた獲得数で勝つのは避けたいと考えていた。サンダース陣営からの批判の余地がなくなるよう、7日の予備選で特別代議員を除いた代議員数全体の過半数を獲得して、それから勝利宣言をする計画を立てていた。
4日のバージン諸島と5日のプエルトリコの予備選で勝利したヒラリーの代議員数は、特別代議員を含めた過半数達成まで約20と迫っていた。ところが大事な予備選前日に、特別代議員の何人かがヒラリー支持を明らかにし、過半数を獲得してしまった。
AP通信がそれを報じたため、あっという間に大騒ぎになった。
サンダース支持者はSNSで「明日の選挙に影響させようというヒラリー陣営の仕業」と怒ったが、このニュースを苦々しく思っていたのはむしろヒラリー陣営の方だ。
前日に「勝利」を宣言されてしまったら、安心して投票しない有権者がいるかもしれない。このニュースを受けたヒラリー陣営の公式ツイートが「APへ。光栄だけれど、予備選に勝たなくてはならないので。カリフォルニア、モンタナ、ニューメキシコ、ノースダコタ、ニュージャージー、サウスダコタ、明日は投票を!」という生ぬるい反応だったのは、そんな理由からだ。
選挙を予測するプロたちも、このニュースには困惑した。ヒラリー支持者が安心して投票しなくなるか、サンダース支持者が諦めて投票しないか、まったく予測できないので数字に反映しようがない。
結果的には、人口動態統計を使った予測の数字に近い結果が出たので、ニュースはあまり影響しなかった。だが、ヒラリーにとっては頭を抱える出来事だった。