消費増税2年半先送りでも消費拡大は疑問、将来不安が拡大
6月3日、消費の落ち込みを防ぎ、デフレ脱却を確実にする狙いで安倍晋三首相が「新しい判断」として決めた消費増税の延期について、国内消費の増加には小売業界からも疑問の声が上がっている。写真は銀座の八百屋。3月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
消費の落ち込みを防ぎ、デフレ脱却を確実にする狙いで、安倍晋三首相が「新しい判断」として決めた消費増税の延期について、国内消費の増加には小売業界からも疑問の声が上がっている。
増税見送りでも、消費の弱さのベースとなっている課題は解決されないうえ、増税を見送れば、社会保障の負担拡大など消費者が抱える将来不安の解消も遠のき、購買意欲がさらに委縮する悪循環に陥る可能性すらある。
ベースが弱い消費
消費税率引き上げの再延期を受けて、第一生命経済研究所では、16年度の成長率見通しを引き下げ、17年度を引き上げた。17年度については、駆け込み需要の反動減と増税による実質所得減がなくなる分、17年4月の増税を前提とした前回の見通しに比べ、1.0%ポイントの大幅な上方修正となった。
しかし、増税延期で消費が力強さを取り戻すわけではない、との指摘は多い。消費者の購買意欲を高めるには、少子高齢化や非正規雇用の拡大、社会保障負担の増加、財政悪化によるインフレ懸念など、構造的な要因の解決が急務。しかし、増税延期がそれらを解決する術にはなりえない。
アベノミクスによって恩恵を受けたのは、資産や株式を保有する一部の富裕層に限られており、消費の中核である中間層の動きは弱い―――。これが、多くの消費関連企業の実感だ。
三越伊勢丹ホールディングス <3099.T>の大西洋社長は、14年秋から中間層の消費の弱さが続いていると指摘する。「所得が増え、使える金が増えている感覚はない。本当に必要なもの以外は買う理由がない」と解説する。