最新記事

法からのぞく日本社会

参院選は7月11日生まれの「17歳」も投票できます

2016年6月30日(木)16時53分
長嶺超輝(ライター)

Thomas Peter-REUTERS

<いよいよ「18歳選挙権」が日本でも始まるが、じつは17歳でも有権者となる場合があり、そこにはちょっと歪んだ法律の理屈が関係している。そもそも、なぜ19歳でも17歳でもなく、18歳に引き下げられるようになったのだろうか>

 7月10日、いよいよ「18歳選挙権」が初適用される参議院選挙が行われる。満18歳や19歳の国民も選挙で一票を投じることができるようになったのは、みなさんもご存じの通りだ。しかし、「17歳でも投票できる場合がある」のは聞いたことがあるだろうか?

 たとえば、2016年7月10日に行われる参議院選挙では、1998年7月11日以前に生まれた日本国民に、選挙権が与えられる。

 お気づきの通り、1998年7月11日生まれの人は、2016年7月10日の段階でまだ17歳である。じつは日本において「18歳選挙権」が適用される選挙では、18歳以上に加えて、選挙の翌日に誕生日を迎える17歳(18歳マイナス1日)の国民も、投票ができる有権者として登録されるのである。

 同様に、2016年7月31日に行われる東京都知事選挙では、生年月日が1998年8月1日以前である日本国籍の東京都民に選挙権が与えられる。

【参考記事】選挙の当落を左右する!? 味わい深き「疑問票」の世界

 では、具体的にどのようなカラクリで、そのような「ズレ」が生じるのだろうか。

nagamine160630-17sai_chart.jpg

ある人が年を取る瞬間は、誕生日の前日の午後12時

3つの法律が交錯した結果、1日ズレる


◆年齢計算ニ関スル法律
第1項 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス

 人が生まれたら、その生まれた日から年齢を数えはじめる。そして、暦が一周すると、誕生日の前日の午後12時に、人は1つ年を取る。


◆民法 第143条(暦による期間の計算)
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。

 世間の常識では、誕生日の午前0時に、人は年を取ると思われているだろう。私自身もそう認識している。だが法律的には、人が年を取る瞬間は、誕生日の前日の午後12時という扱いなのである。

 ただし、当日の午前0時と、前日の午後12時、どちらも同じ時刻なので、ここまでは特に実質的な食い違いが生じているわけではない。


◆公職選挙法 第9条(選挙権)
1 日本国民で年齢満十八年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。

 選挙権は、「年齢満18年以上」に与えられる。つまり、法律上、18歳になったその日から、その人に選挙権が与えられる。

 法律上、「18歳になったその日」とは、18歳の誕生日の前日である。その「午後12時」という瞬間ではない。時刻の要素は切り捨てられ、「18歳の誕生日の前日」全体のことを指している。

 結局、選挙権が与えられるタイミングは、18歳の誕生日の前日の最初(午前0時)となり、常識的なイメージよりも丸1日、前倒しになる。18歳の誕生日の前日に、たまたま選挙が行われれば、まだ17歳にもかかわらず、その選挙の有権者となる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中