最新記事

米世論

原爆投下を正当化するのは、どんなアメリカ人なのか?

2016年5月25日(水)17時00分
本川裕(統計データ分析家)

原爆投下直後の広島の惨状 Shigeo Hayashi/Hiroshima Peace Memorial Museum-REUTERS

<アメリカでは広島・長崎への原爆投下について、いまだに「正当化される」と考える人が多い。しかし世論調査の詳細を見ると、そう考えているのは65歳以上の白人男性、共和党支持者に多く、若年層の回答を見ればアメリカの世論が変化していることがわかる>

 伊勢志摩サミットで来日するアメリカのオバマ大統領が今週27日、現職大統領としては初めて被爆地広島を訪問することになった。核兵器廃絶へ向けた歴史的一歩として歓迎する声は日本の内外であがっている。その一方で、オバマは謝罪しないと言っているのに、日米の様々な立場の人たちが謝罪すべき、謝罪すべきではないと議論している。

 原爆投下の正当性に関する日米両国民の世論については、アメリカの調査機関であるピュー・リサーチ・センターが2015年1~2月に日米で同時に行った意識調査が、これまでにもたびたび参照されてきた。ここでもう一度、そのデータを検証してみたい。

 日本人で原爆投下が「正当化される」と回答した人は14%と少数派なのに対して、アメリカ人では56%と半数を越えていた。もっとも、「正当化される」と回答したアメリカ人の割合は減ってきていると見られている。正当だったとするアメリカ人の割合は、1945年のギャラップ社調査で85%、デトロイト・フリー・プレス紙の91年の調査では63%だった。15年のピュー・リサーチ・センターの調査後に、さらにこの割合は低下しているのではないだろうか。

honkawa-graph01.jpg

 この調査の報告書では、データをグラフにしていたのは全体結果だけで、日本の報道機関が伝えたのもここまでだ。ところが、結果報告書の地の文には属性別の結果が記されている。貴重なデータなので、今回の記事ではグラフにそれも表記した。

 男性より女性、高齢者より若者、共和党より民主党、白人よりそれ以外で「正当化される」という回答が少なくなっている。特に高齢者(65歳以上)では70%なのに対して若者(18~29歳)で47%と年齢で大きな差があることが印象的だ。原爆投下の意思決定について、意識として当事者に近い者であればあるほど、あれは正しかったと考えているのだろう。年齢以外の属性についても同じ見方が可能だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

通商政策など不確実性高い、賃金・物価の好循環「ステ

ビジネス

英2月CPIは前年比+2.8%、予想以上に鈍化 今

ビジネス

BYD、海外販売を今年倍増へ 関税には現地組み立て

ビジネス

日産、25年度に新型EV「リーフ」投入 クロスオー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中