海外の高級車市場戦略描く中国の吉利、ボルボとの協業軸に
中国自動車市場の減速を乗り越え、22%の販売増を実現
5月17日、中国の浙江吉利控股集団(ジーリー・ホールディング)は、経営不振に陥っていたスウェーデンのボルボを2010年に米フォードから買収して以来、欧州のデザインや技術を取り込むことで高級車市場と海外市場を開拓しようと努めている。写真はジーリーのロゴ。デトロイトで2008年1月撮影(2016年 ロイター/Mike Cassese)
中国の浙江吉利控股集団(ジーリー・ホールディング)<0175.HK>は、経営不振に陥っていたスウェーデンのボルボを2010年に米フォードから買収して以来、欧州のデザインや技術を取り込むことで高級車市場と海外市場を開拓しようと努めている。それを中心になって支えているのが英国人デザイナーのピーター・ホーベリー氏(66)だ。
11年から吉利のチーフデザイナーを務めるホーベリー氏は、1990年代にボルボのデザイン部門を率い、2002年からはボルボ、ジャガー、アストンマーティンなどのデザインを統括していた。
同氏はロイターに対し、自動車メーカーはルーツを重視すべきだと語る。「仏塔のルーフを搭載しようと提案しているわけではない。しかし、全ての新車には中国製品だと分かる部分がある」という。
例えば、ダッシュボードの曲線は吉利が本社を置く杭州の有名な橋をイメージしているという。
ひと月のうち3週間をスウェーデンのデザインスタジオで、1週間を上海で過ごすという同氏は「ここは中国企業であり、特別なものを売る必要がある」と話す。
吉利は電気自動車を含め、3万8900元(6000ドル)から24万9800元までの自動車を取りそろえる。ホーベリー氏が携わった新たなフラッグシップセダン「GC9」はおよそ12万元からだ。
IHSオートモーティブのアジア太平洋担当チーフ、ジェームス・チャオ氏は「新たな車は非常に良いようだが、ブランド構築に向けた一歩に過ぎない」と述べた。
吉利とボルボの昨年の販売台数はそれぞれ約50万台。一方、世界トップのトヨタ、フォルクスワーゲン、ゼネラル・モーターズ(GM)はそれぞれ約1000万台だ。
中国市場に目を転じても、LMCオートモーティブが集計した販売チャートによると、フォルクスワーゲンが首位。最大手の国産車メーカーである長安ですら5位で、吉利に至っては14位にとどまっている。