中国戦闘機2機が南シナ海で緊急発進、艦艇3隻とともに米艦の航行に警告
米海軍の「航行の自由」作戦に対し武力で対抗、緊張高まる
5月10日、中国は、同国が領有権を主張する南シナ海の岩礁付近に米艦船が接近したことに反発し、中国軍の戦闘機を緊急発進したと発表。写真は2014年8月に米海軍が撮影した中国のJ11戦闘機。米海軍提供(2016年 ロイター)
中国は10日、同国が領有権を主張する南シナ海の岩礁付近に米艦船が接近したことに反発し、中国軍の戦闘機を緊急発進したと発表。米艦の航行を「平和に対する非合法な脅威」と非難した。
米海軍は中国が実効支配する永暑礁(英語名ファイアリー・クロス礁)から12カイリ(約22キロ)内にイージス駆逐艦ウィリアム・P・ローレンスを派遣し、「航行の自由」作戦を実施した。中国はこの岩礁に人工島を造成しており、滑走路などの建造を進めている。
米国防総省のビル・アーバン報道官は、中国と台湾、ベトナムが南シナ海での航行権を制限しようとしていると述べ、今回の作戦は「過度な海洋の権利主張に挑む」ために実施されたと説明した。
米艦の航行を受けて、中国の戦闘機2機が緊急発進したほか、中国海軍の艦艇3隻が米駆逐艦を尾行し、現場海域を立ち去るよう警告したと中国国防省が発表。
中国外務省の陸慷報道局長も10日、米駆逐艦が中国の領海に不法に進入したと非難した。
今回の作戦は、今月予定されるオバマ米大統領のアジア訪問に先駆けて何かメッセージを発信する意図があったのかという質問に対し、ケリー米国務長官は回答を避けた。
「現在進行している航行の自由作戦の定期的な実施という以外に、何ら事前に計算した戦略ではない」と同長官は訪問先のロンドンで記者団に語った。
厄介な海域
中国が年間5兆ドル(約543兆円)の貿易を支える戦略的輸送路となっている南シナ海の大部分の領有権を主張する一方で、フィリピン、ベトナム、マレーシア、台湾やブルネイなどもそれぞれ重なり合う海域での権利を求めている。