最新記事

ニュースデータ

今の日本に機会均等はあるか?

2016年5月10日(火)16時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

 教育費は高額で、経済的理由で大学進学を断念する生徒も少なくない。奨学金も実質ローン(多くが有利子)で、教育の機会均等を実現する政策としてはあまり機能していない。それは、教育に公的資金を割かない社会だからだ。教育への公的支出がGDPに占める割合は、日本はたったの3.5%でOECD加盟国の中で最も低い(2012年)。

 日本の特異性が分かる図を作ってみよう。<図2>は、教育への公的支出額の対GDP比と、「成功のためには裕福な家庭に生まれることは重要だ」の回答比率の相関図だ。両方が分かる26カ国のデータをもとに作成した。

maita160510-chart02.jpg

 教育費支出が多い国ほど、ライフチャンスの階層的制約を感じる国民が少ない傾向にある。教育は、社会的地位の移動の重要な手段となる面があるため、この傾向は合点がいく。

 しかし日本は、傾向から外れたところに位置している。教育費支出が最下位にもかかわらず、ライフチャンスの階層的制約に対する意識が薄い。極めて奇異な社会だ。「頑張れば成功できる」というイデオロギーが浸透し、政府の怠慢が巧みに隠蔽されているとも言えるのではないだろうか。

 最近、教育と貧困・格差の問題がメディアで取り上げられ、この問題への関心が高まってきた。日本でも、「生まれ」によってライフチャンスがかなり制約されているのではないかという疑念が広がっている。<図2>の縦軸は2009年のデータだが、近年では日本ももっと上に位置しているだろう。

【参考記事】日本の若者の貧困化が「パラサイト・シングル」を増加させる

 人々の意識は、現実としばしば乖離する。見えざる現実をデータで可視化し、状況の改善に向けた声を上げていかねばならない。

<資料:ISSP「Social Inequality IV - ISSP 2009」
    OECD「Education at a Glance 2015」

≪筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=急落、ダウ1679ドル安 トランプ関

ワールド

関税に対する市場の反応、想定されていた=トランプ氏

ワールド

米「NATOに引き続きコミット」、加盟国は国防費大

ビジネス

NY外為市場=ドル対円・ユーロで6カ月ぶり安値、ト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中