最新記事

朝鮮半島

北朝鮮党大会を中国はどう見ているか?

2016年5月9日(月)16時24分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

36年ぶりに開催された朝鮮労働党の党大会 Damir Sagolj- REUTERS

 36年ぶりに開かれた朝鮮労働党の第7回党大会を中国はどう見ているのか。第6回党大会における中国の対応や、昨年、習近平総書記の名義で金正恩第一書記に出した祝電との比較などを通して中朝の現状を考察する。

第6回党大会(1890年)では華国鋒が長文の祝電

 朝鮮労働党の第6回党大会が開かれたのは1980年10月で、そのときには中国共産党の代表団が参加している。さらに当時の中国の最高指導者であった華国鋒が中国共産党中央委員会主席(現在の中共中央総書記)の肩書で長文の祝電を送っている。

 その文字数は1300文字におよび、中朝関係の緊密さと重要性を絶賛している。

 たとえば、

●中朝両党と中朝人民は反帝国主義の戦の中で手を携え、血で固めた偉大なる友誼を形成してきた。

●社会主義革命と建設の中で互いに助け合い非常に緊密で友好的な協力関係を築いてきた。

●中国共産党は偉大なる中朝友誼を比類なく重視し、その継続と発展に、いかなる努力をも惜しまない。

●今後も世界にどのような波風が立とうとも、中国共産党と中国人民の、朝鮮労働党と朝鮮人民に対する支持と団結は永久に変わらない。

 などである。

第7回党大会に対する中国の祝電

 それに比べて、5月6日から開催された朝鮮労働党第7回全国代表大会(第7回党大会)に対して中国が送った祝電の文字数は254文字と非常に短い。しかも「中国共産党中央委員会(中共中央)」名義で送っているだけで、中共中央総書記である「習近平」の個人名はない。

 内容も「大会の成功を祈る」が中心で、中朝両国の友誼に関しては、「かつての指導者たちが育ててきたものだ」とし、「地域の安定と世界平和のために貢献することを祈る」としている。

 1980年の時のような熱気はなく、むしろ「地域の平和を乱すなよ」という内心の言葉を読み取ることができる。

 もちろん代表団は送っていない。

 もっとも国連安保理による経済制裁中でもあるので、出席を拒否される可能性を恐れたのか、北朝鮮側からも招聘状を出していないようだ。1980年の時は118カ国の代表が第6回党大会に参加している。

習近平総書記が昨年出した祝電とのギャップ

 2015年10月10日は朝鮮労働党建党70周年記念であった。それに先立ち、10月9日に習近平総書記が、個人名を銘記して金正恩第一書記に祝電を送っている。

 それだけではなく、チャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員会委員7名)の党内序列ナンバー5の劉雲山・中共中央書記処書記を祝賀式典に派遣したほどだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

現代製鉄、米工場建設を積極検討

ビジネス

英財政赤字、12月は市場予想以上に膨らむ 利払い費

ビジネス

トランプ氏の製造業本国回帰戦略、ECB総裁が実効性

ワールド

中国、国有金融機関に年収上限設定 収入半減も=関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 7
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 8
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 9
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 10
    「敵対国」で高まるトランプ人気...まさかの国で「世…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中