最新記事

中国経済

中国建設機械業界、過剰生産で「遠い夜明け」

経営破産した建設会社から差し押さえられた建設機械が中古品市場に大量に流入

2016年5月7日(土)08時23分

 5月6日、掘削機やブルドーザーなどの建設機械の中国内販売台数は、月間ベースで過去2年間減少が続いていたが、2016年1─3月になるとようやくプラスに転じた。写真の建設機械は北京郊外で4日撮影(2016年 ロイター/Fang Yan)

掘削機やブルドーザーをはじめとする建設機械の中国での販売台数は、月間ベースで過去2年間、減少が続いていたが、不動産販売と建設活動が上向くなかで、2016年1─3月になるとようやくプラスに転じた。

ただディーラーやコンサルタント、そしてメーカー自身も、年初の堅調な動きは回復の始まりを示唆するものではなく、ごく一時的な上向きに過ぎないと慎重な見方を崩していない。かつての建設ブームのお蔭で中国は世界的な金融危機から脱却することができたが、最近の明るい兆候は、業界が引きずる痛みを覆い隠しているに過ぎないというのだ。

新たな排出量規制は建機の販売を後押ししているが、以前は掘削機やローダーを量産していた工場は、現在では生産能力のほんの一部しか稼働しておらず、稼働率は20─25%程度にとどまっているという。

さらに、建設ブームの時代に購入された機械は今ではほとんど使用されておらず、経営破産した建設会社から差し押さえられた建機は中古品市場に大量に流入しており、新たな建機販売の足かせになっている。

年初の中国の経済指標は建設の持ち直しを示すなど総じて好調で、エコノミストの一部は16年の中国成長率予想を引き上げた。ただ4月は振るわず、景気は早くも失速しつつあるとの懸念が広がっている。

ロイターの記者は、北京郊外にあるディーラーを訪ねたが、人影はまばら。まだ包装材に包まれた掘削機やフォークリフトトラックが中古品に交じって放置された状態だった。買い手の姿はまったくなかった。

広西柳工機械<000528.SS>の建機を販売しているディーラーのマネジャーは、ピーク時には需要に追い付かないほどだった、と振り返る。

「待ちきれない顧客は柳工に直接行って、工場の外で列を作ったものだ」と語った。今や、買い手が付く3台のうち2台は中古、という。

世界最大の重機器メーカー、米キャタピラーは先月、中国の建設部門に回復の兆しがみられる、と楽観的な見方を示したが、同時に「どの程度この状況が続くか見極める」などと慎重な姿勢も示した。

中国龍工<3339.HK>の営業担当者は、1─4月は売り上げが伸びたが、それは新たな排出量規制により、顧客が購入を前倒ししたことが大きいとし、こうした需要は長続きはしない、との見方を示した。

<機械が多過ぎる>

中国の建機セクターが抱えている主要な問題の1つは過剰生産だ。

中国と海外の企業は2008年以降、工場に積極投資して生産を急激に拡大した。その結果、景気が減速すると、作り過ぎの状態に。中国ではもはや売れなくなり、輸出市場に活路を求めざるを得なくなった。

建機市場を専門とするコンサルタント会社、オフハイウェー・リサーチによると、2015年の生産は2003年以来の低水準だった。

中国最大のブルドーザーメーカー、山推建機<000680.SZ>で中国国内での販売を統括するある幹部は「政府による投資の影響は当初考えていたほど大きなものではなかった。機械はすでにあふれている」と指摘。「2010年のような急成長は、もう戻ってはこない」と語った。

コマツ<6301.T>は先週、中国の需要が最大25%減少する可能性を警告。藤塚主夫・副社長CFO(最高財務責任者)は、中国市場について「製造業中心に成長が鈍化していることは変わらない」と述べた。

建機業界は確かに、最悪期と比べると回復している。最悪期には12カ月を超えていた在庫も、通常の水準に戻りつつある。例えば、中連重科<000157.SZ>では在庫は3─4カ月で、2カ月という通常のレベルとたいして変わらない水準になっていると、幹部の1人は話している。

しかし、中古市場の拡大や、既存の機械がほとんど使われていないといった現象に代表される供給過剰の問題は残っており、オフハイウェー・リサーチのマネジングディレクター、デービッド・フィリップス氏は、解消まであと1年から1年半はかかるとの見方を示している。

同氏は「とにかく仕事が少なすぎ、機械は多過ぎる」と語った。

(Fang Yan記者、Anne Marie Roantree記者 翻訳:吉川彩 編集:内田慎一)



[北京/香港 6日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

シリア、アサド前政権支持派への軍事作戦終了と発表

ワールド

米政権、不法移民の「自主的な出国」アプリを立ち上げ

ワールド

HSBC、米国株の投資判断「中立」に引き下げ 欧州

ワールド

加オンタリオ州、米向け電力に25%の追加料金 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 2
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 3
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 4
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 5
    「中国の接触、米国の標的を避けたい」海運業界で「…
  • 6
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 7
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    「汚すぎる」...アカデミー賞の会場で「噛んでいたガ…
  • 10
    そして彼らの怒りは頂点に達した...ホワイトハウスの…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 10
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中