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消費税政府内に1─3月期GDP1%止まりなら消費増税は困難の声
経済官庁では延期時のシミュレーションなど様々な動きが始まる
5月17日、政府部内では、18日発表の2016年1─3月期国内総生産(GDP)が年率換算で1%程度のプラス成長にとどまるなら、来年4月の消費増税の実施は難しいとの見方が台頭している。写真は都内で2月撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter)
政府部内では、18日発表の2016年1─3月期国内総生産(GDP)が年率換算で1%程度のプラス成長にとどまるなら、来年4月の消費増税の実施は難しいとの見方が台頭している。経済官庁では、延期の場合の経済的影響や経済対策のシミュレーションを始めた。ただ、安倍晋三首相が最終決断するまでは、対策の規模も固まらず、政府関係者は首相判断の行方に注目している。
<うるう年効果除くと、マイナス成長の公算>
1─3月期GDPは、うるう年による押し上げ効果が年率換算で1─1.2%程度あるため、見かけ上の成長率がプラス1%強だとしても、実勢はゼロ成長となる。
ロイター調査では前期比・年率プラス0.2%と予測されており、その通りの結果になれば、実勢としてマイナス1%を超える落ち込みに直面する。
民間エコノミストの間では、消費も設備投資も停滞し、国内民需はさえないとの予測が目立つ。2015年10─12月期に続き1%を超えるマイナス成長となり、実態は景気後退ではないかとの指摘も出てきそうだ。
4─6月期は熊本地震の影響により、全国的に生産が停滞する可能性が大きい。最新の4月景気ウオッチャーのデータでは、消費者や企業のマインドも大幅に悪化している。生産、消費、設備投資が一度に停滞している可能性が高く、その影響でGDPを相当押し下げていることが予想される。
政府関係者の間では「3四半期連続で成長率がマイナスとなることも想定される情勢で、消費増税ができる環境ではない」という見解も力を得つつある。
中でも「要注意」なのが個人消費だ。前回の5%から8%への引き上げ時に、政府の想定を上回って駆け込み需要の反動減や実質所得の目減りが発生。一部のエコノミストや当局者の中には、未だにその後遺症が個人消費に残っているとする声もある。
3年連続でベースアップが実施され、大企業から中小企業まで幅広く所得が増加したにもかかわらず、足元の個人消費は統計上、軒並み弱い結果が続いている。
<増税延期、「最大の景気対策」の声>
一部で安倍首相が消費増税の引き上げ延期を決断したと報道されたが、政府内で「延期」が公然と語られているわけではない。
しかし、複数の政府関係者によると、最近の経済データなどを勘案し、仮に延期された場合の影響について試算するなど、経済官庁では非公式に様々な動きが始まっているという。
別の政府関係者は、消費増税を延期した場合、16年度に想定していた駆け込み需要がはく落し、その部分がGDPの0.3%分に当たるとの試算結果を明らかにした。そのうえで0.3%分と想定される17年度分の反動減もなくなると話す。
計算上はプラス・マイナスゼロになるはずだが、その政府関係者は「増税による所得の目減りがなくなり、消費者心理の悪化が食い止められる点を重視するべきだ」と強調。さらに別の政府筋も「消費税増税が延期されるなら、最大の景気対策となる」と述べている。
<経済対策の規模、首相判断待ち>
また、景気の停滞が現実化することへの警戒感が、政府内では日増しに高まっており、熊本地震の復興対策とは別に、経済対策を打つべきだとの見方も広がっている。
ただ、消費増税を予定通りに実施するか延期するかで、その規模が変わってくる。当初、内閣府や経済財政諮問会議・民間議員の間では「増税延期なら、経済対策を実施するかどうかわからない」との声もあった。
しかし、安倍首相の欧州歴訪後、延期でも対策実施との声が多くなり、対策内容も水面下で議論されているもようだ。
具体的には、消費喚起につながる子育て支援策の一部前倒しが浮上しているほか、「対策規模を積み上げるには、経済効果の高いインフラ投資も不可欠」として、大型クルーズ船が寄港できるように岸壁を整備する計画や、観光地の道路整備、新幹線延伸などインバウンド関連投資などが目玉施策として検討されている。
ただ、複数の政府関係者によると、増税延期か実施かによって、経済対策の規模は大幅に変わることになるが、安倍首相周辺からは、具体的な指示はなく、実質的には「両にらみ」になっているという。
結局、全ては安倍首相の決断次第という状況だが、冒頭の政府関係者は18日に発表される「1─3月期GDPの結果が、大きな材料となることは間違いない」と話している。
(中川泉 編集:田巻一彦)