リオ五輪を控え軍警察の暴力がエスカレート
警察による市民の殺害が「急増」していると人権団体が告発
カウントダウン 開幕まであと100日を切ったが、治安など問題は山積 Ricardo Moraes--Reuters
オリンピック開幕まであと100日を切ったブラジルのリオデジャネイロで、4月に入って11人の市民が警察に殺されたことが明らかになった。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが今週発表した報告書によると、リオ五輪の開催を控え、警察による殺害が「急増」し、リオ市内の貧困地域では不安が広がっている。リオデジャネイロの警察はただでさえ荒っぽい。昨年は市内だけで307人、サッカーのワールドカップがブラジルで開催された14年には、リオデジャネイロ州全域で580人が警察に殺されたと、報告書は告発している。
ブラジル人の多くはオリンピックを前に警察を「極度に恐れて暮らしている」と、報告書はいう。警察の暴力にさらされるのは、主としてファベーラ(スラム)など低所得地域に住む若い黒人男性だ。ブラジル政府はリオ南東部のリゾート地コパカバーナやマラカナン・スタジアム周辺の路上でホームレスの子供たちの強制排除も進めている。
【参考記事】リオのスラムに群がる貧困ツアーの功罪
4月に警察に殺された犠牲者の1人は5歳の少年で、リオ北部のマジェ地区で軍警察が行った麻薬摘発作戦に巻き込まれて死亡した。この作戦では他にも2人が巻き添えになって負傷。4月4日には市内北部のアカリ地区のスラムで5人が警察に殺され、同じ日にマンギーニョス地区のスラムでも1人が警察に殺害された。
アムネスティは「警察による殺害の増加をオリンピックの準備に直接的に結びつけることはできない」としているが、数字を見れば、五輪開催を控えて警察が免責特権をよいことに暴力的な取締りに走っているのは明らかだ。今年1~3月にはスラムでの警察による殺害が昨年同期と比べ10%増加したと、アムネスティは報告している。
デモ参加者は「公共の敵」
「今のところ警察による殺害はほとんど捜査されておらず、警察官の厳格な訓練や『より殺傷性の低い』武器の使用を定めた明確なガイドラインの策定は実施されていない。当局は今でもデモ参加者を『公共の敵』とみなしている」と、アムネスティ・ブラジルのアティラ・ロケ代表は声明で指摘している。