最新記事

自然災害

太平洋の両端で巨大地震が起こっても、地球は異常なし

地球物理学者から見た驚きは、2つの地震が2つとも人口密集地を襲ったこと

2016年4月19日(火)16時02分
ジョン・プラット

通常の範囲内 熊本とエクアドルで地震が起きたからといって将来の地震のリスクが高まるわけではない kutberk-iStock.

 先週末、日本とエクアドルで巨大地震が相次いだときは、異常事態が起こったと思った人も少なくない。太平洋をはさんで向き合う2カ所の地震が、連動しているように見えたからだ。
 
 エクアドルのマグニチュード7.8の大地震が、16日未明に熊本県熊本地方を襲ったM7.3の地震の数時間後に起きたのは事実だ。だが、2つの地震の間には何の関連もないと、ミシガン大学の地球物理学教授、ジェロン・リツェマは言う。むしろ異常だったのは、2つの地震がほとんど間をおかずに発生したことと、両方が人口密集地を襲ったことのほうだという。

 たとえ2つの地震が交互に繰り返しても、そこに因果関係があるとは限らない。この場合、2つの地震は太平洋の両端で起こったけれども、それぞれまったく別々のプレートに属するもので、関連性はないと、リツェマは言う。

熊本クラスの地震は年15回程度起きている

 こうした地震が珍しいわけでもない。熊本を襲ったのと似たようなM7クラスの地震は世界中で年に15回ほど起きている(それより小さい地震は140万回に上る)。つまり月1回以上のペースで巨大地震が起こっているわけだが、大半は人間の知らないところで起きているので話題にならないだけだ。

 エクアドルを襲ったようなM7.8クラスの地震の頻度はより少ないが、それでも統計的には珍しいというほどではない。このクラスの地震は1~2年に1回は発生する。こらも多くの場合、誰も気付かない場所で起こるのだ。

 地震の破壊力を決める大きな要素の1つはマグニチュードよりどこで起きるかだ。先週末のケースが珍しいのは、2つの大地震がどちらも人口が多いところで起き、被害が広範に及んだことだ。

 今後は、大地震が多発するようになるのだろうか? 

 幸いなことに、今回の日本とエクアドルの地震が原因で将来のリスクが高まることはなさそうだ。「この一週間に起こったことのなかには、プレート・テクトニクス上の変化を示唆するものは何もない」と、リツェマは言う。「地球に変化はない。通常の活動の範囲内だ」

© 2016, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中