最新記事

核兵器

機密のベールを脱いだ北朝鮮の核開発プログラム、情報開示の真意は?

2016年4月15日(金)11時04分

 こうした主張が示唆するのは、同国が3月の国連制裁や、米国などからの厳しい警告にもかかわらず、ペースを鈍化する気がないことだ、と米国在住で、国際戦略研究所(IISS)のミサイル専門家マイケル・エレマン氏は語る。

「こうした情報開示や表明、そして『実験』は、米国本土を脅かす核搭載長距離ミサイルを、北朝鮮がすでに保有、あるいはもうすぐ保有するとの物語を構築するためのキャンペーンの一環のようにみえる」と同氏は指摘。「こうした開示が、たとえ本当であったとしても、核能力開発を目的とした計画の一部だろう。疑問なのは、こうしたテストはどの程度リアルなのかということだ」

 同国のこうした活動は、北朝鮮が弾道ミサイル技術を含めた計画に関わることを禁じた制裁の執行を担当する国連の専門家によって、厳しく監視されることになる。

懐疑派を説得か

 国際的な兵器専門家の間では、北朝鮮の能力が従来考えられていた以上に進化しているとの観測が広がっている。まだ原始的でも、操作可能なICBMを、今後10年間の後半にも北朝鮮が保有する可能性があると、北朝鮮の兵器計画に詳しい米政府関係者は語る。

 懐疑主義に打ち勝ち、近隣国や米国の警戒を高めるのことが、北朝鮮が意図する効果かもしれない。特に、5月の労働党の党大会を控えた、国内向けプロパガンダとしての重大な価値もある、とソウルにある北朝鮮大学の梁茂進教授は述べた。

 「普通の軍隊にとっては、武器開発は機密扱いであるのが当然だ。しかし、金正恩第一書記は何年も韓国や米国に自らの軍隊を抑えられてきた。そのため、彼は自らが望む潜在的な脅威を最大にしたいと思っている」と同教授は述べた。

 最近のICBMのエンジン燃焼試験は、3月の固体燃料ロケットエンジンの試験と、弾道ミサイルの大気圏再突入に関する試験に続くものとなった。

 金正恩氏は、5回目となる新たな核実験の実施を公言している。経済開発と核開発能力という2つの政策を発表するとみられる議会開催に先駆けて核実験が行われると言うアナリストもいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中