最新記事

フランス

売春婦ではなく客を処罰する買春禁止法がフランスで可決

「性を売る側ではなく買う側が悪い」という考え方は、スウェーデンに始まってさらに広がる気配

2016年4月8日(金)17時04分
ミレン・ギッダ

仕事を奪うな! 性労働者からは客側を処罰する法案への反対もある(写真は13年の抗議デモ) Jacky Naegelen-REUTERS

 今週フランスの国民議会は、売春婦ではなく買春した客を処罰する北欧型の買春禁止法案を可決した。この法案は2013年に左派の社会党から提案されたが、その後、左右両派からの反対意見を受けて、国民議会の上下両院で修正が続いていた。

 法案が可決されたことで、フランスでの買春は違法となり、性的サービスに対して対価を払った者には最大4274ドルの罰金が科せられる。有罪となった買春客は、性労働者の現状について学ぶ講義を受けなければならない。

性労働者組合は反対?

 新しい買春禁止法に賛同する性労働者もいるが、BBCの報道によると、国民議会前では法案に反対する約60人の性労働者が抗議デモを行った。フランスの性労働者組合は、新法によって性労働者の収入が減り、闇で買春行為を行うことで危険な状況に追い込まれるのではないかと危惧している。

 一方、新法の支持者は、これで人身売買組織の摘発がやりやすくなると主張する。フランスの性労働者の85%が人身売買の被害者と見られている。

【参考記事】「セックス拒否」は政治も動かす

 法案は国民議会下院で賛成64、反対12の大差で可決された。賛否が分かれる法案だけに棄権した議員も多かった。なかでも右派の議員はこの法案に激しく反発してきた。

 これで2003年からフランスで施行されていた、性的サービスを提供する性労働者を処罰する法律は無効となる。今後、買春で有罪となった客は初犯で1709ドルの罰金を、再犯に及ぶと倍以上の罰金を科せられることになる。

 北欧のスウェーデンは、性的サービスを提供する側ではなく客の側を処罰する法律を導入した最初の国で、フランスの買春禁止法はそれに続くもの。同様の法律は、ノルウェー、アイスランド、北アイルランドでも施行されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明らかに【最新研究】
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 8
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    メーガン妃とヘンリー王子の「山火事見物」に大ブー…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 7
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中