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金融豪ドルと国債に世界中から資金流入、中銀は対応苦慮
世界中の中央銀行が豪国債を購入、通貨安の影響で輸出産業や観光業に危機感
4月6日、豪ドルは今、さながら「通貨の信任投票」で票を集めるように世界中から資金が流入している。写真は豪ドル紙幣。シドニーで2008年10月撮影(2016年 ロイター/Tim Wimborne)
豪ドルは今、さながら「通貨の信任投票」で票を集めるように世界中から資金が流入している。ただし、オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)のスティーブンス総裁にとってはむしろ迷惑な話だ。
オーストラリア国債は最高位の格付けを得ている上に、利回りの面でも一部がマイナスとなっている欧州や日本と比べれば、はるかに高い。このため世界中の中央銀行がオーストラリア国債を購入し、さらにこぞって積極的な金融緩和に動いているがゆえに、豪ドルが押し上げられ、これまで通貨安の恩恵を享受してきた国内の輸出セクターや観光業などが脅かされている。
例えばオーストラリアのワイン産業は、豪ドルが1米ドル未満まで下落した2013年以降ずっと好調が続いてきた。昨年のワイン輸出額は17%増の21億ドルに達した。
テイラーズ・ワインズのミッチェル・テイラー社長は、豪ドルが1米ドル超を上回っていた時代の業界の厳しさを忘れていない。「為替レートの上でわれわれよりも有利な国の輸出業者に取って代わられてしまった」と話す。
しかしその後の豪ドル安によってオーストラリアのワイン産業は海外事業を拡大し、現在は生産量全体の25%を輸出に回している。今後3年で輸出を2倍にする計画だが、豪ドルの反発が続けば実現は危うくなる。
<巨大な力>
スティーブンス総裁は今週の会合後の会見で、豪ドルの上昇が経済の順調な進展を阻む「厄介な要素」だと指摘するとともに、必要な場合に通貨安を狙った利下げに動くことに含みを残した。
ただRBAは豪ドル高を強くけん制しながら、半ばあきらめの姿勢も見える。
ロウ副総裁は最近の講演で、どの中銀も通貨を下げたがっているので「当然ながらだれにとっても通貨安誘導がうまくいくとは限らない。為替レートは相対的な価格だからだ」と語った。
RBAが立ち向かおうとしているのは、外国中銀による巨額の豪ドル買いだ。国際通貨基金(IMF)が先週公表した外貨準備データによると、昨年の豪ドル保有額は34%増加して1770億豪ドルになった。2014年は5%しか増えていないのと比べれば、その急増ぶりが分かる。
昨年の外貨準備に占める豪ドルの割合も、14年の1.78%から1.9%に上昇した。
<投資妙味>
豪ドルに買いが集まるのは、同国の世界金融危機への対応が比較的成功したことの結果でもある。そのおかげでRBAは政策金利を過去10カ月にわたってなおプラス2%に保っている。周知のように、ユーロ圏や日本で政策金利がマイナス水準になった。
またオーストラリアの10年国債利回りは2.46%で推移。ドイツは0.13%しかなく、日本に至ってはマイナス0.80%前後だ。
1月に日銀がマイナス金利を導入してから、日本からの海外投資は増える一方で、その一部はオーストラリアに流入している。
日本の財務省が発表した対外証券投資のデータでは、第1・四半期の本邦投資家の保有外国資産は11兆円で、このうち8兆円は債券が占めた。
ウェストパックのチーフ通貨ストラテジスト、ロバート・レニー氏は「高利回りの外国資産に対する日本からの需要は4月にかけて増加するように見える。オーストラリアの利回りは依然として抜群に魅力的で、日本の投資家による豪ドル建て資産の購入拡大が期待される」と述べた。
オーストラリア国債は既に64%を外国人が保有し、総額はおよそ2800億豪ドルに上る。世界金融危機以前はわずか500億豪ドルだった。
こうした資金流入を主な理由として、3月の豪ドルの上昇率は7%強と過去4年間で最大を記録。一時は0.77米ドルを突破し、輸出関連産業にリスクが広がりつつある。
テイラーズ・ワインズのテイラーズ社長は「現在の水準ではなく、0.66─67米ドル付近にとどまってほしい。0.80米ドル台半ばまで豪ドル高が進めば、事態は難しくなる」と話した。
(Wayne Cole記者)