最新記事

自動車

震災対策に揺れる自動車産業、コスト競争とのせめぎ合いに直面

災害に強い供給網構築を目指してきた自動車メーカー各社だが、コスト増や製品力の低下が課題

2016年3月20日(日)19時33分

3月18日、自動車メーカーや部品各社で災害に強い供給網の構築が広がっている。写真は地震で崩壊したトヨタ車ディーラー店。南三陸で2011年3月撮影(2016年 ロイター/Carlos Barria)

 自動車メーカーや部品各社で災害に強い供給網の構築が広がっている。在庫積み増し、標準品の採用、購入先や生産拠点の分散化など、5年前の東日本大震災以降に各社が講じてきた対策は多岐に及ぶ。しかし、災害対策への急傾斜はコストの増加や製品力の低下を招きかねない。激化する国際競争の中で、災害への備えと利益や効率の追求をどう調和させるか、各社はなお多くの課題に直面している。

在庫増強や設計変更

「どこにどの会社のチップ(半導体)を使っているか、ふだんは考えていなかった。(供給が)止まったときは大騒ぎだった」。米自動車部品メーカーのZF TRW(当時はTRWオートモティブ)日本法人の中根義浩社長は5年前をこう振り返る。

 TRWは半導体大手ルネサスエレクトロニクス<6723.T>から車載用半導体の供給を受けていた。しかし、ルネサスは主力の那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災、供給不能に陥りTRWは電動パワーステアリングやエアバッグ用センサーの生産を停止せざるを得なかった。

 震災後TRWは、供給網が寸断しても自社生産に支障のないよう、1社からしか買えない部品の在庫量を従来の3日分から6日分に倍増、複数社から購入できる部品については設計を見直した。いざという時にどの社の部品でも使えるようにする狙いからだ。一部のプラスチック製品については北米と中国の両工場に型を置き、緊急時にはどちらの工場でも作れるような態勢を取った。

 独化学品メーカー、メルクでも問題が起きた。同社の小名浜工場(福島県いわき市)では車の塗料に使うパールのような光沢が特徴の高輝度の顔料を作っている。震災時、同工場は設備損傷こそ免れたものの、生産に欠かせない水の供給が止まり操業を約2カ月停止した。

 当時は同工場が高輝度顔料の唯一の生産拠点だったため、米フォード・モーターズなどが同顔料を使っている車を販売できない事態になった。同社は震災後、顔料の在庫を増強し、現在は常時「数カ月分」の在庫を保有しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

〔情報BOX〕米相互関税、各国首脳の反応

ビジネス

米関税で市場に動揺、貿易戦争・景気後退を懸念 「最

ワールド

訂正(3月31日配信の記事)-トランプ大統領、3期

ワールド

トランプ氏が相互関税発表、日本は24% 全ての国に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中