最新記事
フロン排出抑制法全国の企業で遅れるエアコン点検義務への対応
担当者も対象機種や具体的な実務を理解していない現状
PR
昨年のフロン法施行で企業の定期的なエアコン点検が義務付けられた zvirni-iStock.
エアコンや冷蔵庫の冷媒として現在の空調機器に広く使われている「代替フロン」は、オゾン層を破壊する「特定フロン」に代わる物質として90年代以降に急速に普及した。しかしこの代替フロンも、地球温暖化の効果が二酸化炭素(CO2)の数百~数千倍以上もあることがわかり、現在は世界各国でその対応が急がれている。
昨年4月に施行された「フロン排出抑制法」(以下、フロン法)は、オフィスのエアコンや業務用の冷蔵庫などの空調機器を使う企業に対して、フロンが漏れ出すことがないよう機器を点検・管理することを義務付けている。業務用の空調機器のほとんどがこのフロン法の対象になっているが、実際の企業の対応は遅れている。対象機器のリストの作成や、各企業の管理者の目視による「簡易点検」など、実際にフロン法で定められた実務作業を実施できている企業は全体の2~3割程度と見られている。
背景にあるのは、フロン法成立を急いだ政府の準備不足があるようだ。周知期間が法施行直前の短期間しかなかったため、制度についての理解が深まらないうちに15年度が始まってしまい、企業の担当者が、フロン法の対応に必要な担当者や予算を確保できなかったケースも多いという。
空調機器メーカー最大手、ダイキン工業のグループ企業でエンジニアリング会社のダイキンエアテクノは、昨年4月の法施行後、義務付けられた点検・管理を一括して代行するサービスを開始した。同時に全国で一定規模以上の企業の担当者を対象にして、フロン法に基づく実務に関してわかりやすく説明するセミナーを開催している。今年度開催したセミナーは全国で合計約50回、参加人員は2000人に上る。
法施行後も、企業側が具体的な対応として何をすれば良いのか、またそもそもどの機器が対象になっているのか、理解されていないケースも多い。同社のセミナーに参加した企業担当者からは「初めてやることがわかった」という声が聞かれることもある。
顧客企業との密接な関係が新たなソリューション提案を生む
空調機器の点検サービスを提供するダイキンエアテクノが特にアピールしているのが、空調機器の施工から保守、管理、さらに機器のクリーニングや遠隔監視システムの導入など、様々なメンテナンスを提供できる「ワンストップサービス」の強みだ。例えばフロン法では、企業の「管理者」が3カ月に1回、目視による設置機器の「簡易点検」の実施を義務付けているが、空調機器の特徴を知り尽くしている同社であれば、最初から目視の点検が実施しやすいように機器を設置するアドバイスができる。
また点検サービスの技術者が、点検後に企業担当者と「5分間」の会話をして、顧客の細かいニーズを汲み取る「アフターファイブ」というサービスを心掛けている。「点検を通じて顧客企業との繋がりができれば、店舗内のLED照明や給湯システムなど、空調機器とは別の設備のご提案もできる」と、ダイキンエアテクノ広報担当者は話している。
同社ではこの4月からの16年度に、全国で年間100回以上のセミナーを開催する予定で、フロン法の内容と実務に関してあらためて企業への周知を図ることにしている。フロン法に基づく空調機器の点検サービスは、世界的に急務となっている温暖化対策の一環ではあるが、同時にダイキンエアテクノにとって、顧客企業の様々なニーズを掘り起こして新たな提案へと繋げるビジネスチャンスにもなっている。