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フロン排出抑制法オフィスエアコンの定期点検で省エネ・省コストを実現
メンテナンスなしで使い続ければ消費電力は急増する
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世界はさらに一歩踏み込んだ温暖化対策へと舵を切った Michelle Schiro-iStock.
昨年11月、パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)で、世界は地球温暖化対策の歴史的転換点とも言える合意にいたった。今世紀後半には、世界全体で温室効果ガスの人工的な排出量を森林などの自然が吸収できる量と均衡させる――つまり温室効果ガスの排出を"実質ゼロ"にすることを目指す国際ルール「パリ協定」が採択されたのだ。各国はこれまでよりさらに踏み込んだ温暖化対策を求められることになった。
こうした世界的な流れを受けて、日本の温暖化対策の初めての指針となる「地球温暖化対策計画」が今月、政府審議会で策定された。計画では、温室効果ガスを2050年までに80%削減するという長期目標が掲げられ、業務・オフィス部門でも30年までに約40%の削減目標が設定されるなど、各部門に先進的な取り組みを求めている。今年5月に開催される伊勢志摩サミットを見越して、国際的に見て遜色のない行動計画を示したかった政府の思惑もあったようだ。
これからの日本社会で、温暖化対策がますます重要な課題になることは間違いない。そして温暖化対策計画に先駆けて昨年4月に施行されたのが、オフィスのエアコンや業務用の冷蔵庫など空調機器の点検を各企業に義務付けた「フロン排出抑制法」(以下、フロン法)だ。現在冷媒として広く使用されている代替フロンを漏れ出させないように空調機器を管理することがフロン法の趣旨となっている。
フロン法では、業務用の空調機器を使用する企業の担当者が「管理者」となり、対象となる機器のリスト(設備管理台帳)を作成したり、3カ月に一度の目視による「簡易点検」や有資格者による1~3年に1回の「定期点検」を実施することを義務付けている。こうした管理を怠り、空調機器からフロンを漏出させた場合は、管理者に対する罰則規定もある。
温暖化対策が地球レベルの課題だとはいえ、このフロン法への対応には当然ながら企業のコスト負担が伴う。法律自体の企業の認知度は高いものの、法施行に向けた事前の準備期間が短かったこともあり、実際の対応はかなり遅れている。対象事業者のうちフロン法で義務付けられた点検等を実施できているのは2~3割程度にとどまっているという。
エアコンの定期点検は省エネ・省コストにもつながる
空調機器メーカー最大手、ダイキン工業のグループ企業でエンジニアリング会社のダイキンエアテクノは、昨年のフロン法施行と同時に、管理者の機器リストの作成や点検業務の実施など法律に基づく実務作業を一括して代行するサービスを開始した。
点検サービスを提供するうえでダイキンエアテクノが特に強調しているのは、フロン法に基づく空調機器の点検・管理がそのまま「省エネ・省コスト」対策になるというメリットだ。メンテナンスをしないで空調機器をそのまま使い続けると、フィルターの汚れによって消費電力は急激に高くなる。業務用の暖房機器をメンテナンスなしで3年間使い続けると、消費電力が2倍に跳ね上がるというデータもある。空調機器を定期的に点検し、適切にフィルターの清掃などを行うことは、日常的な省エネルギーへと繋がる。また猛暑に突然エアコンが壊れて、高額の修理コストがかかるような事態も防ぐことができる。
ダイキンエアテクノ広報担当者は、昨年施行のフロン法について、「企業にエアコンへの関心を持ってもらう良い機会になっている」と話している。「法律を順守して定期的に点検を実施し、機器の状態を良好に維持すれば、省エネ・省コストという企業にとってのメリットもあることをお伝えしている」。
日常のオフィスでエアコンの状態を気にかける機会は、どこの企業でもそれ程多くはない。今回のフロン法は、オフィスで使っているエアコンや冷蔵庫が、環境にどんな影響を与えているか見つめ直すきっかけにもなりそうだ。