いざとなれば、中朝戦争も――創設したロケット軍に立ちはだかるTHAAD
北に存在感を誇示 韓国にある鳥山空軍基地に飛来した米軍のステルス戦闘機(2月17日) Kim Hong-Ji-REUTERS
北朝鮮の制裁決議に関する国際世論の下、北を追いつめて米朝戦争に巻き込まれるくらいなら、いっそ北を攻撃して中朝戦争を起こした方がましだという声さえ中国にはある。したたかな中国だが、中国外交戦略の失敗か?
中朝軍事同盟を破棄してでも
中国が北朝鮮への支援を全て断ち、中朝国境貿易をも完全に閉鎖することは、出来ないわけではない。しかしそれを断行した時に何が起きるか、容易に想像がつくが、一応シミュレーションをしてみよう。
まず自暴自棄になった北朝鮮は、戦争への火ぶたを切ってしまうだろう。それもまだ財力が持つうちに早めに踏み切る可能性がある。
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このとき北朝鮮が中朝友好協力相互援助条約(事実上の中朝軍事同盟)を中国が破ったとして、戦争をする相手国は米韓だけでなく、中国をも含むことになる。
となれば、中国は米韓とともに北朝鮮と戦うことになり、戦争の軍配は明らかに米国側に上がるので、戦争終了後の朝鮮半島における米軍のプレゼンスは大きくなる。
現在は北朝鮮から韓国を守るためということを目的とした上での在韓米軍であり、THAAD(米国の高高度ミサイル防衛システム)の韓国配備計画ではあるが、北朝鮮が消滅した後でも、東シナ海や南シナ海の「防衛」のためと称して米軍およびそのオプションは朝鮮半島に居座るかもしれない。今年のアメリカ大統領選の結果によっては、北朝鮮が消滅すれば朝鮮半島から引き揚げるかもしれないが、中国の陸続きに米軍が駐屯する可能性は低くない。中国としては、安全保障上不利になる。
もう一つの仮定として、中国が国連安保理で妥協できるギリギリくらいの程度の制裁に賛成票を投じた場合を想定してみよう。中露がねばって、その他の安保理常任理事国から譲歩を引き出した場合である。譲歩と言っても、今回ばかりは制裁レベルは高いはずだ。
やはり追い詰められた北朝鮮は戦争へと走る危険性を孕んでいる。
万一、この条件下でも北朝鮮が戦争を起こした場合は、北朝鮮は中国に対し中朝軍事同盟を理由として、北朝鮮側に立って米韓側(おそらく連合国側)と戦わせようとするだろう。それは最悪のシナリオなので、中国としては絶対に避けたい。そういう情況に追い込まれて戦争に巻き込まれることを中国は最も恐れている。なぜなら現在の中国軍の力では、絶対に米軍に勝てないからだ。敗北すれば、中国共産党による一党支配体制は必ず崩壊する。