最新記事

中国

抗生物質を過剰投与される中国の児童、耐性菌出現を招く可能性

上海の児童3分の1から複数の抗生物質を検出、やがて耐性菌の出現を招く可能性

2016年2月29日(月)10時33分

2月22日、上海で就学中の児童を対象に行った最新の調査によると、被験者の8割から少なくとも1種類の抗生物質が検出され、およそ3分の1からは複数検出された。写真は薬局で、虫眼鏡を使って薬の箱に書かれた説明を読む男性。中国遼寧省で2011年撮影(2016年 ロイター/Jacky Chen)

 上海で就学中の児童を対象に上海の復旦大学が行った調査によると、被験者の8割から少なくとも1種類の抗生物質が検出され、およそ3分の1からは複数検出された。中国の地元メディアが22日報じた。

 抗生物質の過剰な摂取は、やがて薬が効かない耐性菌の出現を招く可能性があるという。

 畜産用のものを含む21種類の抗生物質について、市内の学校に通う505人の児童を対象に調べたところ、約8割の児童から少なくとも1種類の抗生物質が検出された。また、被験者のおよそ3分の1から、異なる複数の抗生物質が検出された。

 専門家によると、中国の医師は抗生物質を過剰に投与する傾向があるという。背景に抗生物質に対する誤解が広く浸透していることがある。

 世界保健機関(WHO)が昨年11月にまとめた報告書によると、中国人の約3分の2が抗生物質は風邪とインフルエンザの治療に有効だと考えており、また3分の1が頭痛にも効くと信じている。

 こうした抗生物質の乱用は、現在は治療可能な病気でも薬に対する耐性が強くなるなど、保健衛生にとって世界的なリスクとなりかねない。

 同報告書はまた、「医療制度を超え、抗生物質に対する耐性の経済的コストは甚大だ。中国では、2050年までに年間の死者が最大100万人に達するとの予測もある」と指摘している。

 中国の政府系ニュースサイトによると、2013年に同国で使用された抗生物質の量は16万2000トンで、これは全世界の使用量のほぼ半分に匹敵する。また5万トン以上が土壌や河川に放出されているとしている。

 

[上海 22日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中