最新記事

ニュースデータ

育児も介護も家族が背負う、日本の福祉はもう限界

2016年2月16日(火)16時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

 韓国や欧米主要国は両者の中間にあるが、米英仏では「民間の保育事業者」という回答が比較的多い<図2>。個々の家庭が雇い入れる保育シッターなどを指している。フランスではこの回答が最も多い(49%)。実際に、保育所よりシッターに子どもの世話を委ねる親が多い。

maita160216-chart02.jpg

 高齢者のケアに関する意識を見ても、同じような配置のグラフになる。日本は少子高齢化が最も進んだ社会で、核家族化も欧米と同じ程度に進んでいる。2010年の核家族世帯の割合は、日本が56.3%、フィンランドは55.0%だ(国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集2015』)。それなのに、福祉に関する意識は両国で大きく異なっている<図1>。

 社会が変化したにもかかわらず、日本の家族依存型の福祉は変わっていない。近年、児童虐待や介護を苦にした家族間の殺人事件など、家庭内の悲劇がニュースになることが目に付くのも、無関係ではないだろう。

【参考記事】日本人の知的好奇心は20歳ですでに老いている

 昔の家族は、消費のみならず生産(家業)、子育て、介護など、多くの機能を担っていた。ピラミッド型の人口構成で、数世代が同居する大家族が多かった時代では、それも可能だった。しかし現在、家族をめぐる状況は大きく変化した。かつてのように、様々な機能を家族が一手に担うことは困難になっている。

 児童保育や高齢者介護など、日本の福祉は家族(私)依存型の性格が強い。しかしこれ以上、家族に負担を強いることには無理がある。家族依存型の福祉が限界に達していることを認識し、公的サポートを増やすことを本気で考えなければならない段階に日本は来ている。

<資料:ISSP「Family and Changing Gender Roles IV」(2012年)

≪筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発、景気敏感株がしっかり TOPIX最

ビジネス

オリックス、純利益予想を上方修正 再エネの持ち分会

ビジネス

オリックス、自社株取得枠の上限を1500億円に引き

ワールド

台湾有事巡る発言は悪質、中国国営メディアが高市首相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 6
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中