ドル/円は安値圏で「神経戦」、介入含めた政策対応で思惑交錯
政策対応への警戒感も高まってきているが、底の見えない恐怖感がドル買い/円売りを控えさせている
2月12日、ドル/円の下値不安が増している。写真は都内で昨年8月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
ドル/円の下値不安が増している。世界的なリスクオフが広がるなか、センチメントの悪化に歯止めがかからず、110円割れを視野に入れる市場関係者も増えてきた。当局による為替介入など政策対応への警戒感も高まってきているが、底の見えない恐怖感がドル買い/円売りを控えさせており、安値圏での神経戦となっている。
<当局の動きに敏感な市場>
東京市場の休日明けとなった12日、112円台前半で推移していたドル/円が、正午過ぎに113.02円まで急上昇した。
世界の金融市場でリスク回避ムードが強まる中、日銀の黒田東彦総裁と財務省の浅川雅嗣財務官が相次いで首相官邸に入ったと伝わり、何らかの政策対応が打ち出されるとの思惑が広がったためだ。
だが、間もなく、ドル/円は再び112.50円へと失速。首相官邸から出てきた黒田総裁は「国際金融情勢と世界経済動向について首相と協議した」と述べるにとどまったことで、ひとまず政策対応への思惑が後退した。
日本が祝日だった11日の市場でも、111円前半を推移していたドル/円が113円前半に急反発する場面があった。為替介入のうわさが広がったためだ。
これらの動きで共通するのは、日本の政策当局の対応に対する市場の強い警戒感だ。「相場の地合いは悪いままだが、政策期待が高まれば、反転する可能性がある。短期筋は、ドル急落と政策発動、両面の恐怖に板挟みとなっている」(国内金融機関)という。
<投機筋も戦々恐々>
外為市場では年初から、世界経済への懸念や原油安、欧米金融機関への財務不安などのリスク要因が相次いでテーマに浮上し、比較的安全とみなされている円に資金シフトが起きている。
10─11日にはイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言があったが、米金利は年内に緩やかに上昇していくとの従来からの考えをあらためて表明。総じてハト派的な内容と市場で受け止められた。
ただ、市場では安心感は広まらず、世界経済のけん引役がいなくなるという不安感が強まってしまった。
IMM通貨先物における投機筋のポジションは、アベノミクス相場が始まった2012年後半以降、一貫して円売り越しだったが、年初からの荒れ相場で円買い越しに転換。日銀のマイナス金利導入で円買い越しは約1万枚減ったが、その後の1週間で、再び円高が急速に進んでおり、直近では「円買い越しは再び膨らんでいそうだ」(国内金融機関)との見方が多い。