最新記事

欧州難民危機

メルケル率いる与党の若手幹部、難民選別の「国境センター」を提案

EUの難民対策が進まずドイツにしわ寄せがきていることにCDU内部でも不満が高まる

2016年1月25日(月)18時05分

1月24日、メルケル独首相率いるCDUの幹部ユリア・クレックナー氏は、オーストリアとの国境沿いに「国境管理センター」を設置し、滞在資格がない移民や難民を速やかに本国送還することを提案した。写真はマインツで行われたCDU幹部会合で8日撮影(2016年 ロイター/Kai Pfaffenbach )

 ドイツのメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の幹部、ユリア・クレックナー氏は、オーストリアとの国境沿いに「国境管理センター」を設置し、滞在資格がないと判断した移民や難民を速やかに本国送還することを提案した。

 西部ラインラント・プファルツ州の責任者を務める同氏は、大量の難民流入に対して、首相が推進する欧州の解決策は正しい判断だとの考えを示し、同氏の提案は「それを補完するもの」だと述べた。

 今回の提案は、難民危機への欧州連合(EU)全体での取り組みが遅々として進まず、ドイツの多くの自治体のインフラが圧迫されていることに、CDU内部で不満が高まっていることを浮き彫りにした。

 ドイツは昨年1100万人の移民や難民を受け入れた。ドイツの対応能力をめぐる懸念や、昨年暮れに西部のケルンで発生した女性への暴行事件などを受けて犯罪や安全対策への不安が高まっており、CDUや姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)の支持率に陰りが見えている。

 独ビルト日曜版が委託した世論調査によると、CDU/CSUの支持率は先週から2%ポイント低下し36%となった。右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は1%ポイント上昇し10%、メルケル政権の連立パートナー、社会民主党(SPD)が1%ポイント上昇の25%だった。

 メルケル首相は移民・難民に門戸を開く姿勢を崩さないことで次第に孤立を深めているように見えるが、一部の保守勢力が主張する移民制限や国境封鎖への圧力には抵抗してきた。

 首相は他の欧州諸国に働きかけて移民受け入れの割当制を導入し、流入ルートとなっているトルコに難民対策で協力を要請するなどしたが、状況はあまり進展していない。

 隣国のオーストリアは先週、移民・難民の今年の受け入れ人数を3万7500人に制限する方針だとし、数カ月で上限に達する可能性があるとの見方を示した。

 首相後継者の有力候補を自認するクレックナー氏は自らの政策方針書において、欧州各国の難民登録センターの処理作業を支援するとともに、オーストリアとの境界に設ける国境センターで難民不適格者の本国送還を加速させることで、ドイツの自治体の負担を和らげることができると述べた。

 

[ベルリン 24日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PPI、1月前年比3.5%上昇 予想上回る

ビジネス

日産の今期800億円の最終赤字、リストラ費用100

ビジネス

日産社長「業績改善にめどつけバトンタッチ」、新たな

ワールド

ウクライナ外相、終戦協議への参加を主張 米ロの動き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザ所有
特集:ガザ所有
2025年2月18日号(2/12発売)

和平実現のためトランプがぶち上げた驚愕の「リゾート化」計画が現実に?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景から削減議論まで、7つの疑問に回答
  • 3
    2025年2月12日は獅子座の満月「スノームーン」...観察方法や特徴を紹介
  • 4
    フェイク動画でUSAIDを攻撃...Xで拡散される「ロシア…
  • 5
    【クイズ】今日は満月...2月の満月が「スノームーン…
  • 6
    吉原は11年に1度、全焼していた...放火した遊女に科…
  • 7
    【クイズ】アメリカで「最も危険な都市」はどこ?
  • 8
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 9
    便秘が「大腸がんリスク」であるとは、実は証明され…
  • 10
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮兵が拘束される衝撃シーン ウクライナ報道機関が公開
  • 4
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ド…
  • 5
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 6
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 9
    2025年2月12日は獅子座の満月「スノームーン」...観…
  • 10
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップル…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中