南西諸島を軍事拠点化する日本版「A2AD」、中国の海洋進出に対抗
実際の運用には輸送、ロジスティクスなど課題が山積
12月18日、中国が南シナ海の支配を強める中、南西方面に軸足を移す日本の防衛政策が、地域の軍事バランスにとって重要性を増しつつある。写真は都内で10月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)
中国が南シナ海の支配を強める中、南西方面に軸足を移す日本の防衛政策が、地域の軍事バランスにとって重要性を増しつつある。中国本土から西太平洋への出口をふさぐように連なる南西諸島を軍事拠点化し、東シナ海に壁を築く日本の戦略は、中国軍の膨張を食い止めたい米国の思惑とも合致する。
南西諸島に監視部隊やミサイルを置いて抑止力を高め、有事には戦闘機や潜水艦などと連携しながら相手の動きを封じ込める戦略を、日本政府は「海上優勢」、「航空優勢」と表現している。しかし、安全保障政策に携わる関係者は、米軍の活動を制限しようとする中国の軍事戦略「接近阻止・領域拒否(Anti─Access/Area Denial、A2AD)」の日本版だと説明する。
重要性増す第一列島線
「事態を遅らせることはできたかもしれない。だが、列車はすでに出発してしまった」──。米軍が南シナ海で「航行の自由作戦」に踏み切った今年10月末、アジア情勢に詳しい米軍幹部はロイターにこう語った。
南シナ海に滑走路を備えた人工島を造成する中国に対し、米海軍は艦船を派遣し、中国の海ではないとメッセージを送った。しかし人工島はほぼ完成しており、関係者の間では、中国が軍事的な支配を確立しつつあるとの認識が広まっている。
1996年の台湾海峡危機の際、中国軍は急派された米空母の前に矛を収めざるを得なかった。その経験をもとに中国は、有事に米軍が戦力を投入できないよう、南シナ海、東シナ海、さらに西太平洋まで「内海化」することを狙っていると、米国や日本の専門家は分析している。
「中国の目標は南シナ海、さらに東シナ海で覇権を取ることだ」と、在日米国大使館の政治軍事部長や米国務省の日本部長を歴任したケビン・メア氏は言う。「譲歩すれば中国の挑発的な行動を助長するだけだ」と、同氏は話す。