安倍首相周辺で消費税10%延期の声、衆参ダブル選と連動の思惑
米利上げによる景気動向が今後の政局に大きな影響を与える
12月21日、安倍晋三首相の周辺では、2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げ延期を主張する声が増えてきた。写真はクアラルンプールで11月撮影(2015年 ロイター/Olivia Harris)
安倍晋三首相の周辺では、2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げ延期を主張する声が増えてきた。キーワードは「成長重視」。その決断の是非を問う衆参ダブル選を来年7月に実施するのではないかとの思惑も、政府・与党の周辺で盛り上がっている。首相周辺で何が起きているのか、水面下の動きを探った。
成長重視の首相、財務省への不信感
「モディ首相とは、成長重視という点で意見が一致しました」──。安倍首相はインド訪問直後の14日、経済界のリーダーを集めた官邸での夕食会で、「成長」という語句に力を込めた。
複数の首相周辺の関係者によると、安倍首相にとって「成長」は、縮こまりがちな日本経済に活力を与える強力な武器という位置づけだ。
財政赤字の縮小でも、成長による税収増を重視し、社会保障費の膨張を消費増税で賄おうとする財務省の主張とは、相容れない部分が多い。
そんな安倍首相と財務省の溝は、ひょんなことから表面化してしまう。昨年9月の訪米で、安倍首相は著名な米大学教授らと昼食会を催したが、その席で「財務省の試算は信用ならない」と述べた。
首相周辺の関係者によると、その5カ月前に実施した消費税5%から8%の引き上げで、個人消費が予想を超えて落ち込み、そのことが安倍首相の脳裏から消えなかったという。
結局、消費増税後の国内景気は足取りが弱く、2014年度の実質国内総生産(GDP)の成長率はマイナス1.0%に落ち込んだ。
リフレ政策で気脈を通じている経済学者に対し、安倍首相は最近になって「自分の任期中、2度もマイナス成長になるのはダメだ」と、本音を漏らした。
軽減税率で見えた官邸・公明の蜜月
ただ、昨年11月に安倍首相自身が「リーマン・ショック並みの国際金融危機が来ない限り増税する」と明言していた経緯がある。17年4月の消費税10%を再延期するハードルは高い。