2人殺害、ロシア軍機撃墜でわかった下界の危険
12時間に及ぶ救出作戦で操縦士の1人は生還できたが
復讐の連鎖 シリアの反体制派やISISを空爆してきたロシアは地上から見れば憎むべき敵 Ministry of Defence of the Russian Federation/Handout via Reuters
シリアとトルコの国境付近で24日、トルコ軍機に撃墜されて脱出したロシア軍機の操縦士2人のうちシリア軍に救出された1人が、トルコ領空に入った可能性はないと証言した。もう1人は殺害された。救出に向かったヘリコプターの搭乗員の1人も命を落とした。
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は12時間に及ぶ救出作戦でロシア軍機のコンスタンチン・ムラフチン操縦士を救出し、シリア領内のロシア軍基地に「無事」連れ帰ったと発表した。
トルコ側はロシア軍機を攻撃する前、5分間に10回警告したと主張しているが、救出された操縦士はそれは事実ではないと否定したと、タス通信が伝えた。ロシア機はシリア領空を飛行中で、警告はいっさいなかったという。
「1秒たりとも(トルコ領空に迷い込んだ)可能性はない。高度6000メートルを飛んでおり、視界も良好だった」と、ムラフチンはロシアの国営テレビ、ロシア1の取材で語った。「無線による警告も視覚的な警告もいっさいなく、通常通り戦闘コースに向かって飛行していた」
ロシア軍の発表によれば、もう1人の操縦士はシリアの反体制派の攻撃を受けて死亡した。ヘリコプターで操縦士の救出に向かったロシアの海兵隊員1人もシリアの反体制派に殺害されたという。
ロシア軍のセルゲイ・ルドスコイ中将によると、救出に向かった2機のミル8ヘリコプターのうち1機はシリア北部で2人の操縦士を捜索中に小火器で攻撃されたという。
一方、シリアの反体制派は、対戦車ミサイルでヘリを吹き飛ばしたと声明を出した。イギリスに拠点を置く人権団体「シリア人権監視団」の情報では、攻撃を受けたヘリはシリア北部のラタキア県に緊急着陸したところで、もう1機はラタキアに近いシリア北西部のロシア軍基地フメイミムに避難した。
ロシア兵の遺体とされる映像を公開
ロシア軍機が撃墜された国境付近はシリアのトルコ系少数民族トルクメン人の支配地域。トルクメン系の反体制派は操縦士を「両方」殺害したと声明を出し、ロシア兵の1人のものとされる遺体の映像を公開した。
トルクメン系反体制派はトルコ政府に支援されているが、シリアのアサド政権に敵対する武装勢力を攻撃対象にしているロシア軍の空爆にさらされてきた。トルコはロシアに対して繰り返しこの地域での空爆を止めるよう求めてきたが、ロシアはここにはISIS(自称イスラム国、別名ISIL)がいると主張した。
戦闘爆撃機の撃墜を受けて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシア軍機を攻撃から守るためフメイミム基地に地対空ミサイルシステムS-400を配備すると発表した。