殺人より自殺に走る「内向型」日本人は政府にとって都合が良い
国民の窮状すべてを自己責任で切り捨てる日本の社会は健全とは言えない
すべてが自己責任 殺人発生率と自殺率を比較した「内向性」の数値では日本と韓国が飛びぬけている Nakao Yuriko-REUTERS
殺人と自殺。いずれも「殺」という文字のついた究極の社会的な逸脱行動であり、その国際ランキングはよく話題になる。殺人率は中南米、自殺率は旧共産圏の社会で高いことはよく知られている。
しかしながら、この逆の方向を向いた2つの逸脱行動を同時に観察することで、当該社会の国民性のようなものが見えてくる。このような試みは、これまであまりないようだ。
下の<表1>は、2010年の殺人発生率と自殺率の国際統計を集計したもの。前者は人口10万人あたりの殺人発生件数であり、出所は国連薬物犯罪事務所(UNODC)ホームページの「Crime and criminal justice statistics」だ。後者は人口10万人あたりの自殺者数で、世界保健機関(WHO)ホームページの「Mortality Database」が出典元だ。
まず主要国の統計を見てみる。殺人率はブラジルが23.3と飛びぬけて高く、日本は0.4と最も低い。自殺率は反対にブラジルが最も低く、トップは韓国で、日本はそれに次ぐ。韓国で自殺率が高いのは、高齢者の自殺が非常に多いためだ。南米は殺人型、日韓は自殺型で、他の欧米諸国はその中間に位置している。
表の右端には、筆者独自の計算で「内向率」という数値を示した。各国の国民がどれほど内向的かを推測する尺度で、殺人と自殺の総和に占める自殺の割合(%)で表わしている。殺人・自殺とも人口10万人あたりの数にしているので、このような計算をしても差し支えないだろう。これをみると日本が98.3%で最も高く、その次が韓国で97.2%、アメリカは72.4%で、ブラジルになると17.8%まで急降下する。
殺人と自殺の総和を極限の危機状況の合計とみなすと、日本ではそのほぼ全てが自殺によって処理されている。一方ブラジルでは、危機打開のための攻撃性の8割以上が「外」に向けられている。日本人の内向性は、国際意識調査でしばしば明らかにされるが、こうした客観的な逸脱統計にもそれははっきりと表れている。