最新記事

アフガニスタン

ISがまたアフガン遺跡を破壊? いや、中国が

5000年の歴史を誇る古代都市メス・アイナクが銅の採掘のために破壊されようとしている

2015年7月2日(木)19時46分
ポリー・モセンズ

売られた遺産 仏教の歴史そのものを書き換える可能性がある Omar Sobhan-Reuters

 アフガニスタンにある5000年前の古代遺跡が破壊されようとしている。ISではなく中国の鉱山会社によって。

 首都カブールから南東へ約40キロ離れたメス・アイナク遺跡では、古代都市の住居址のほか、多数の仏像や仏塔、寺院が見つかっている。これまでに発掘作業が完了したのは遺跡全体のごく一部にすぎないが、現状ではこの貴重な歴史遺産は永久に失われかねない。遺跡の下に膨大な銅の鉱石が眠っているためだ。

 遺跡の保存に奮闘する若いアフガニスタン人の考古学者を追ったドキュメンタリー映画『メス・アイナクを救う』の製作チームは7月1日、「メス・アイナクを救う日」(#SaveMesAynak Day)キャンペーンを実施。ソーシャルメディアを通じて世界中の人々に遺跡保全運動への協力を呼び掛けた。

 映画で紹介された考古学者カディル・テモリは、発掘作業を進めながら、保存活動に取り組んできた。これまでに発掘されたのは遺跡全体の10%程度だ。「さらに発掘が進めば、アフガニスタンの歴史ばかりか仏教の歴史そのものが書き換えられる可能性がある」と、製作チームは遺跡の重要性を訴える。

最もコストの安い露天掘りで山ごと崩す

 アフガニスタン政府は、鉱物資源の開発資金を調達するため中国の国有鉱山会社と契約を結んだ。中国企業は30億ドルで採掘権を獲得、メス・アイナク鉱山の開発で1000億ドル相当の銅を採掘する計画だ。

 映画の製作チームによると、「中国の国有会社は採掘コストが最も安く、環境へのダメージが最も大きい露天掘り方式を使う」という。「この方式では、遺跡だけでなく、一帯の山々が跡形もなく崩されることになる」

 1日には、製作チームの呼び掛けに応じて、世界中の人々が署名や寄付を行ったが、アフガニスタン政府は寄せられた署名について何もコメントしていない。開発計画を見直すのか、人類の貴重な歴史遺産をみすみす失うのか、ガニ政権の決断が問われる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米政権、74億ドルの対イスラエル武器売却承認 議会

ワールド

トランプ米大統領、「相互関税」導入計画 週初にも発

ワールド

防衛費の増額要求ない、対日関税「わからない」=日米

ワールド

日米首脳「USスチールは買収でなく投資」、米産LN
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ドラマは是枝監督『阿修羅のごとく』で間違いない
  • 3
    「嫌な奴」イーロン・マスクがイギリスを救ったかも
  • 4
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 5
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 6
    賃貸住宅の「床」に注意? 怖すぎる「痕跡」を発見し…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    睡眠中に体内は大掃除されている...「寝ているあいだ…
  • 9
    なぜ「ファスティング」は「筋トレ」と同じなのか? …
  • 10
    ドイツ経済「景気低迷」は深刻......統一後で初の3年…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 5
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 6
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 7
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 8
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 9
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ド…
  • 10
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中