最新記事

スポーツ

FIFAが犯す6つの人権侵害

汚職スキャンダルだけじゃない、FIFAを中心とするサッカー界の拝金主義はこんなにも罪深い

2015年6月24日(水)09時11分
ジェシカ・フィーラン

サッカー界の暗部 パキスタンのサッカーボール工場では子供が働いている Mohsin Raza- REUTERS

 FIFA(国際サッカー連盟)は現在、その歴史上最大にして、初の(これには議論の余地がありそうだが)汚職捜査の渦中にある。捜査を率いる米司法当局は、FIFAの幹部9人が巨額のカネが絡んだ「体系的で根深い」汚職に何年にもわたって関与したと指摘している。

 だがもっとひどいのは、サッカー界の拝金主義が人命を危険にさらしていることだ。訴状に記されなくても、FIFAの金儲け主義の名の下になされた不当行為はいくつもある。そのごく一部をここに挙げてみよう。


1)ボール製造は児童労働で 90年代まで、世界のサッカーボールの大半──プロの試合で使われる手縫いボールのうち推定75%──はパキスタン製だった。

 その主な生産地がシアールコート地域。ここで5〜14歳の子供7000人以上が、サッカーボールの縫製作業を1日中していたのが見つかっている。11時間労働を強いられていた子供もいた。ボール1個を仕上げるのには半日かかるが、1個当たりの報酬はわずか50セント程度だ。

 児童擁護団体や労働団体がこの虐待を暴露したため対応を迫られたFIFAは、98年のワールドカップ(W杯)フランス大会以降は児童労働で造られたボールを使用しないことを決めた。

 一定の効果はあったが、児童労働が完全になくなったわけではない。しかも成人の労働者についても低賃金や長時間労働、女性差別などの問題が指摘されている。

2)W杯特別法廷の設置 10年のW杯南アフリカ大会ではFIFAの求めに応じて、迅速な審理で大会中の犯罪に対処する「W杯特別法廷」が設置された。

 この特別法廷で下された判決は、並外れて厳しいものだったという批判がある。非武装で携帯電話を盗んだ者に対して、5年の禁錮刑が言い渡された事件もあった。

 判決に至るまでも異常なほど迅速だった。例えば、水曜日にジャーナリスト数人の金品を奪ったジンバブエ人2人が、木曜日に逮捕され、金曜日にはもう15年の刑期を務め始めていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中