北朝鮮、男性中心社会を支える闇マーケットと女たち
家計所得の7割以上を女性が稼ぐという北朝鮮経済の実態とは?
5月25日、軍事最優先で男性中心社会である北朝鮮だが、闇市場を基盤にした経済が形成されつつあるなか、実際に生計を立てているのは女性たちだ。写真は開城工業団地で働く北朝鮮の従業員。2013年12月撮影(2015年 ロイター/Kim Hong-Ji)
[ソウル 25日 ロイター] - 軍事最優先で男性中心社会である北朝鮮。しかし、闇市場を基盤にした経済が形成されつつあるなか、実際に生計を立てているのは女性たちだ。
韓国の統一研究院の調査によれば、北朝鮮では家計所得の7割以上を女性が稼いでおり、その大半は近年拡大している闇市場での取引によるという。
専門家の話では、女性は北朝鮮の労働力人口1200万人の半数程度だが、男性の多くは報酬がほとんど支払われない国家の仕事、もしくは兵役に就いている。
「北朝鮮では、男性は社会主義の最前線で戦い、女性は生活のために戦っていると言われる」
こう話すのは、2012年に韓国に脱北したJungさん(26歳)。現在は首都ソウルで大学に通いながら、闇市場で生計を立てる母親を支援するため、定期的に北朝鮮に仕送りしている。母親は豚を飼育したり、トウモロコシで作った酒を売ったりするが、「国からの配給はなく、父親は無給でほぼ義務的な仕事に就いている」という。
北朝鮮の中央計画経済は、冷戦時に経済的にも軍事的にも支援を受けていたソ連の崩壊から回復していない。1990年代には壊滅的な飢きんに見舞われ、約80万─150万人が命を落とした。このころから、女性たちは家族を養うため、キノコや銅線のスクラップを売り始めた。
国家による配給が遠い昔の記憶となるなか、人々は生活のために非公式経済にますます参加するようになり、特に女性が不釣り合いなほど積極的な役割を担っている。
とはいえ、軍や政府などを支配するのは依然として男性であり、北朝鮮のエリート層にいる女性は金正恩第1書記の親類に限られている。
闇市場は厳密に言えば合法ではないものの、その中核には腐敗官僚もいるため、広く許容されている。
脱北者や専門家によれば、北朝鮮には約400の市場があり、一部では店を出す際に労働党の当局者に税金を支払わなければならないという。