最新記事

人権問題

「目には目を」の壮絶刑、イラン政府の真の狙い

核協議で柔軟な姿勢を見せるイランの残虐行為にどう対処するかが問われる

2015年3月27日(金)12時11分
フェリシティ・ケーポン

恐怖支配 ロウハニ大統領は強酸攻撃への厳罰を約束してきたが  Umit Bektas-Reuters

 先週、イラン北部の都市キャラジの刑務所で男性の片目をくりぬく刑が執行されたと、国営メディアが伝えた。この男性は、5年前に別の男性の顔面に強酸を浴びせて失明させたとして、有罪判決を受けていた。

「おぞましい行為」だと、ノルウェーの首都オスロに拠点を置く国際人権団体「イラン・ヒューマンライツ」のマフムード・アミリーモガッダムは非難する。「ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)がやっていることとほとんど変わらないが、イランの場合は、専門の医師を使い、国家として秩序だって行っている。このような刑罰は、現代にはあってはならない」

 こうした「目には目を」の報復刑はイランの刑法で認められてはいるが、実際に執行されたのは初めてとされている。少なくとも、イランのメディアで報じられたのはこれが最初だ。

 イラン政府の狙いは、反体制派を抑え込み、国民に強烈なメッセージを送ることにあると、アミリーモガッダムはみている。核問題で欧米と交渉しているが、国内に変化はないと国民に思い知らせようとしているというわけだ。「政府の目的は権力の誇示だ。社会に恐怖を広げる上でこれほど効果的な方法はない」

 国際社会がISISの残虐行為を厳しく非難する一方で、核協議に配慮してイランの人権問題に目をつぶっているとすれば、ご都合主義の二枚舌と言われても仕方があるまい。

[2015年3月17日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

過度な変動への対応、介入原資が制約とは認識してない

ビジネス

米新興EVリビアン第1四半期は赤字拡大、設備改修コ

ビジネス

アングル:米企業のM&A資金、想定利下げ幅縮小で株

ビジネス

円安にはプラスとマイナス、今は物価高騰への対応重要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 6

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中