最新記事

軍事

ドローンの脅威と生きる市民の本音

アメリカの無人機攻撃で家族や友人を殺されたパキスタンやイエメンの人々の悲痛な叫び

2015年3月17日(火)10時55分
ヒャシンス・マスカレンハス

日常の一部 市民を殺すドローン攻撃を批判する壁画(イエメン) Khaled Abdullah Ali Al Mahdi-Reuters

 2014年に英ガーディアン紙からカメラを託されたとき、モハメド・サレ・タウイマンは13歳だった。イエメンのマーリブ州に住む彼は、ドローン(無人機)の飛び交う下での暮らしを記録するよう頼まれた。

 ラクダ飼いの父と10代だった兄は、11年にアメリカのドローン攻撃で殺された。モハメドたちは頭上を飛び交うドローンを「死の機械」と呼んで恐れている。「ドローンの夢を見てうなされる子も多い。精神疾患になった子もいる」と、彼は話した。「ここは地獄になった」

 そして15年1月、モハメドもドローンに殺された。13歳の少年を国際テロ組織アルカイダの戦闘員と判断したのか、とガーディアンは米国防総省とCIA(米中央情報局)に質問した。回答はない。

 彼の死は、ドローン攻撃が生む数々の悲劇の1つにすぎない。バラク・オバマ米大統領は就任3日後の09年1月23日、ドローン攻撃を開始。パキスタン北西部の北ワジリスタンで、少なくとも9人の民間人を殺した。以後、市場や民家、葬式や結婚式の会場などが攻撃を受け、英NPOの調査報道協会によれば2400人以上が死亡している。

 人々は子供を学校に行かせなくなった。大勢が集まる行事にも行かない。「彼らは一日中怯えて暮らしている」と、12年の報告書「ドローン攻撃下の生活」の研究チームの1人、サラ・ナッキーは米ニュース専門ケーブル局MSNBCに語った。

 実際、ドローンが飛び交うなかで日常生活を送る市民はどう感じているのか。パキスタンとイエメンの人々の声を紹介しよう──。

ズバイル・レーマン
「青空は嫌いだ。曇りのほうがいい。曇りだとドローンが飛ばないから。僕たちは24時間、騒音を聞き続けている」(13年、父親と9歳の妹と共に米議会で証言した北ワジリスタンの13歳の少年。祖母は前年10月、畑でオクラを収穫中に殺された)

ラフィク・ウル・レーマン
「母がなぜ狙われたのか、教えてほしい。生徒たちに何と教えたらいいのか。ドローンはもう来ないと言ってやりたいのに」(ズバイルの父で小学校教師)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:調整局面入りの米国株、一段安の瀬戸際か

ワールド

原油先物は反発、ウクライナ停戦合意なお不透明

ワールド

コロンビア大、親パレスチナデモで建物占拠の学生処分

ワールド

エアプサン火災、補助バッテリーのショートが原因か=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 3
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 4
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 5
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 8
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 9
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎…
  • 10
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中