最新記事

ウクライナ紛争

アメリカの殺傷兵器供与でウクライナ紛争は米ロ対決の場に?

東部で戦闘が激化し混迷が深まるなか、オバマ政権はミサイル供与を検討し始めた

2015年2月5日(木)16時51分
クキル・ボラ

民間人も犠牲に ウクライナ東部ドネツク市内に乗り込む親ロ派の戦車 Maxim Shemetov-Reuters

 ウクライナ東部で政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘が激化するなか、アメリカはウクライナ政府軍を支援するため、対戦車ミサイル「ジャベリン」など殺傷力のある武器と弾薬を供与することを検討し始めた。

 ウクライナへの軍事援助を見直すにあたり、ホワイトハウスで議論されているのはロシアがどう出るかだ。殺傷性の武器供与で親ロ派の攻勢を押しとどめられればいいが、親ロ派を支援しているロシアの軍事介入がエスカレートすれば事態はさらに悪化する。「今の状況は予断を許さないが、言うまでもなくロシアの出方を見極めた上で(供与を)決定すべきだ」と、米政府高官はウォール・ストリート・ジャーナルに語っている。

 親ロ派はロシアから提供されたとみられる重火器を使用しており、ウクライナ政府軍がそれに対抗するには殺傷性の兵器が必要だとの声が米政府当局者の間で高まっている。一方で、殺傷兵器を供与しても、ウクライナ政府軍は親ロ派を撃退できず、ウクライナ東部の混乱が悪化するだけだという見方もある。

 アメリカはすでにウクライナ政府軍にロケット弾迎撃システムや防弾チョッキ、双眼鏡、小型ボートなど、非殺傷性の装備を提供している。しかし、これまでは外交交渉による解決を重視し、殺傷兵器の供与を見合わせてきた。

 昨年9月にベラルーシの首都ミンスクでウクライナ政府と親ロ派の停戦合意が成立した後も、ウクライナ東部では散発的な戦闘が収まらず、今年1月末に行われた両当事者の協議も決裂。ドネツク州を中心に戦闘地域が拡大し、市民を含む犠牲者が多数出る状況を踏まえ、ホワイトハウスと米軍指導部は殺傷兵器の供与を選択肢に入れた。

 ジャベリンは自律誘導ミサイルで、重装甲の戦闘車両を破壊する能力を持つ。歩兵が肩に担いで発射できる携行式ミサイルだが、ウクライナの戦闘地域での使用では、車両に搭載して発射することで敵の戦車その他の車両をより迅速に攻撃できるとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中