アメリカの殺傷兵器供与でウクライナ紛争は米ロ対決の場に?
東部で戦闘が激化し混迷が深まるなか、オバマ政権はミサイル供与を検討し始めた
民間人も犠牲に ウクライナ東部ドネツク市内に乗り込む親ロ派の戦車 Maxim Shemetov-Reuters
ウクライナ東部で政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘が激化するなか、アメリカはウクライナ政府軍を支援するため、対戦車ミサイル「ジャベリン」など殺傷力のある武器と弾薬を供与することを検討し始めた。
ウクライナへの軍事援助を見直すにあたり、ホワイトハウスで議論されているのはロシアがどう出るかだ。殺傷性の武器供与で親ロ派の攻勢を押しとどめられればいいが、親ロ派を支援しているロシアの軍事介入がエスカレートすれば事態はさらに悪化する。「今の状況は予断を許さないが、言うまでもなくロシアの出方を見極めた上で(供与を)決定すべきだ」と、米政府高官はウォール・ストリート・ジャーナルに語っている。
親ロ派はロシアから提供されたとみられる重火器を使用しており、ウクライナ政府軍がそれに対抗するには殺傷性の兵器が必要だとの声が米政府当局者の間で高まっている。一方で、殺傷兵器を供与しても、ウクライナ政府軍は親ロ派を撃退できず、ウクライナ東部の混乱が悪化するだけだという見方もある。
アメリカはすでにウクライナ政府軍にロケット弾迎撃システムや防弾チョッキ、双眼鏡、小型ボートなど、非殺傷性の装備を提供している。しかし、これまでは外交交渉による解決を重視し、殺傷兵器の供与を見合わせてきた。
昨年9月にベラルーシの首都ミンスクでウクライナ政府と親ロ派の停戦合意が成立した後も、ウクライナ東部では散発的な戦闘が収まらず、今年1月末に行われた両当事者の協議も決裂。ドネツク州を中心に戦闘地域が拡大し、市民を含む犠牲者が多数出る状況を踏まえ、ホワイトハウスと米軍指導部は殺傷兵器の供与を選択肢に入れた。
ジャベリンは自律誘導ミサイルで、重装甲の戦闘車両を破壊する能力を持つ。歩兵が肩に担いで発射できる携行式ミサイルだが、ウクライナの戦闘地域での使用では、車両に搭載して発射することで敵の戦車その他の車両をより迅速に攻撃できるとみられている。